WONDERFUL ROCK -361ページ目

Midnight At The Oasis/Maria Mardaur

今から正確に34年前、1973年のことである。まだ池袋にヤマハがあった頃、学校の帰りに手軽にレコードや楽器が見られるのでよく通っていた。もっとも、ちょっと「よそ行き」の時や、輸入ものの楽譜などを物色するときは、渋谷や銀座まで遠征したものだ。

よく晴れた日曜日だったか、店の入り口に、外に向かってついているスピーカーから流れている女性ボーカルに釘付けになった。伸びやかで、艶っぽく、まるで空に舞い上がるような声に、テレキャス系のギターの滅茶苦茶カッコいいカッティング。慌てて店に飛び込み、ほんの少し馴染みのお姉さんに、それがMaria Muldaurと聞いた。それからというもの、根が勉強熱心な僕らは、やれAmos Garrettだ、Geoff Muldaurだ、Better Daysだと、泥臭いカントリー色の濃い音楽にしばらくとり憑かれることになる。

 それはともかく、「オールド・タイム・レディ」と邦題がつけられたこのアルバム、本当は自分の名前をアルバム名にしている、まさにデビュー盤という感じ。中でもタイトルに挙げた ♪ 真夜中のオアシス(ミッドナイト・アト・ジ・オエイシスですぞ!)が秀逸。ギターは恐らくAmos のベストプレイだろう、そして影の立役者にストリングス・アレンジのNick DeCaroを挙げておこう。

 今にしてみると、この73年という年、その前後の72、74、75年辺りと比べると、かなり地味で、「不作」の年だったように思う。西海岸でMariaがこのアルバムを発表したこの年、奇しくも東海岸では、Steve GaddChuck RaineyDavid SpinozzaなどのNYの名うてのミュージシャンを配したBette Midlerのデビューアルバムも発売された。 と言うわけで、73年という年はこの2人の女性の登場以外にあまり印象に残っているアルバムはない。どちらを先に買ったのか忘れてしまったが、どうでもいいことさ、細野さんの"HOSONO HOUSE"も73年だ(笑)。<K>

オールド・タイム・レイディオールド・タイム・レイディ
マリア・マルダー

Warner Music Japan 2008-05-28

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