せつないもの。


大工が怪我して右腕を失った。

腕がなくてはもとのしごとはできないので、

そういうひとは、家のまわりを掃く仕事をするようになる。

家のまわりをぐるぐるまわるから、犬走りとよぶ。


親方は、かれが何時から何時まで働いたかを

息子にまいにち聞きにいかせ(ほかの職人たちの分も)、

かれが8時から5時と言ったなら、

8時から8時まで働いたことにしてつける。

なぜなら、家のまわりをはくだけの仕事は、

ひとりぶんの収入では家族をやしなえないから。


親方は、職人たちみんなのめんどうをみる。

だから親方の奥さんは、いつもお金に困っている。