「新参者シリーズついに完結!」そんなキャッチ・フレーズで煽られれば煽られる程観る気が失せて、初めて観たのは公開後二年以上経ってからです。「シリーズものは絶対に最初が面白い!」というのが鉄則ですが、ドラマだけでなく東野圭吾氏のファンとしては、やはり”最後の加賀恭一郎”は見ないわけにはいきません。それに大好きな街の日本橋が舞台ですから尚更ですね

 

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「祈りの幕が下りる時」

2018年/日本(119分)

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東野圭吾の人気ミステリー小説を映画化した「新参者」(加賀恭一郎主演)シリーズの完結編!

 

 

 原作

東野圭吾

 監督

福澤克維

 キャスト

加賀恭一郎/阿部寛

浅居博美/松嶋菜々子

松宮脩平/溝端淳平

 

金森登紀子/田中麗奈

浅居厚子/キムラ緑子

宮本康代/烏丸せつこ

 

大林(捜査一課主任)/春風亭昇太

石垣(捜査一課刑事部長)/上杉祥三

 

浅居博美(20歳)/飯豊まりえ

浅居博美(14歳)/桜田ひより

押谷道子/中島ひろ子

苗村誠三/及川光博

田島百合子/ 伊藤蘭

浅居忠雄/小日向文世

加賀隆正/山﨑努

 主題歌

JUJU 「東京」

 

なんと言っても”新参者の最終章”ということで配役が豪華です。阿部寛というより”新参者”の加賀恭一郎がいいですね。相手役には万全を期しての松嶋奈々子。他にも、大好きな田中麗奈をはじめ、キムラ緑子、烏丸せつこ、小日向文世、伊藤蘭などが脇を固め、ドラマ「新参者」からも友情出演の恵俊彰、杏、香川照之らが顔をそろえていたのもうれしいですね。主題歌のJUJUの「東京」が泣けます。レビューの終わりにこの曲のMVも紹介してますので是非どうぞ!

 

  「新参者」加賀恭一郎最後の事件!

東京都葛飾区のアパートで、滋賀県在住の押谷道子(中島ひろ子)の絞殺死体が発見された。アパートの住人も姿を消し、住人と押谷の接点は見つからず、滋賀県在住の押谷が東京で殺された理由もわからず捜査は難航する。謎に包まれた殺人事件の捜査線上に、ある女性演出家(松嶋菜々子)が浮上してきた。そして、その被害者が発見された部屋から、日本橋を囲む橋の名が出てきて加賀恭一郎(阿部寛)は、亡き母の秘密と結びつけるのだが・・・

▲加賀恭一郎/阿部寛

▲浅居博美/松嶋菜々子

▲松宮脩平/溝端淳平

▲浅居博美(20歳)/飯豊まりえ

▲浅居博美(14歳)/桜田ひより

 

  加賀恭一郎はなぜ「新参者」になったのか?

 

2010年に連続ドラマで放映された「新参者」を皮切りに、2011年スペシャルドラマ「赤い指」、2012年映画「麒麟の翼」、さらに2014年スペシャルドラマ「祈りの森」に続く加賀恭一郎シリーズのフィナーレを飾る作品です。東野圭吾氏の加賀恭一郎シリーズは全10作で時系列で並べてみましたが、映像化された順とは若干異なります(最下記参照)

 

全ての始まりは連続ドラマ「新参者」です。東野圭吾氏の本格ミステリーを阿部寛主演でドラマ化し 複雑に入り組んだ人々の心の闇を一人の刑事が解き明かす物語です。原作も面白いですが、毎回芸達者なゲストが出るドラマ版がおススメです。あわせて是非この際にご覧ください。本作では、事件の裏に隠された哀しい事実が明らかになる一方、これまで最大の謎のまま解き明かされていなかった、加賀の母の失踪の真相や父との確執、そして加賀がなぜ捜査一課から日本橋署の「新参者」になったのかという、これまで明かされることがなかった加賀恭一郎自身の謎が明らかになります

 

 

日本橋、人形町界隈は大好きな街で、毎年何回か泊りがけで遊びに行きます。横浜からだと1時間くらいで行きますが新旧さまざまな店を見るのが楽しくて、毎回日本橋のど真ん中のホテルでのんびりして遊びます。銀座にもほど近く、是非街歩きを楽しんで欲しい街ですね

 

 

 

 

  人が嘘をつく時には”祈り”が隠されている

 

全体的な印象としては、東野圭吾氏の原作ですから練られたストーリーは面白いです。ただ、このポスターを見ても感じるように映画全体としては若干散漫な印象です。ただでさえ人間関係が複雑で情報が多く「最後の最後に詰め込んだ」感があり消化不良の印象がしました。それでも豪華メンバーに加え見ごたえあるサスペンスドラマに仕上がっています

 

好きですよ、この映画!

 

この物語の中心には2組の親子が登場します。忠雄(小日向文世)と博美(松嶋菜々子)と加賀と両親(山崎努と伊藤蘭)です。娘を守るために別れる父と娘、父と息子の確執、別れても息子を想う母。そして、それぞれの深い愛には「祈り」が込められています。決定的なのは博美がわざわざ危険を冒してまで加賀に会いに行ったことです。彼女は会わずにはいられなかった!父が最後に愛した女性の息子を見ておきたかった。逆に加賀は、母が最後に愛した男性を知りたかった。この映画はそれぞれの”祈り”によって犯罪を犯し、犯罪が暴かれていきます。そしてそれはまるで明らかになることをを望んでいたように見えました

 

 

 

  トンネル内に響く「お父ちゃん!」

 

テレビドラマ「新参者」-スペシャルドラマ「赤い指」-そして映画「麒麟の翼」のあとに続く物語として自分の中でかなりハードルを上げておりました。回想シーンは面白いのですがその分、現代のサスペンスの部分が希薄になった印象で惜しく感じました。それでも、物語としては面白い。エピソードを彩る俳優陣が素晴らしかったですね。特に14才と20才の浅居博美を演じた飯能まりえと桜田ひよりは良かったです。特に桜田ひよりの回想シーンのトンネルでの別れのシーンは泣けます!重い決意と娘への深い愛を背負った父(小日向文世)の背中・・そして、トンネル内に響く泣き声!「お父ちゃん!」。娘役の桜田ひより(当時16才)をこの一言だけでファンになりました。彼女はドラマ「HERO」第2シーズンや「相棒」など多くのドラマや映画に出演しており、昨年の連ドラ「あたりのキッチン」でも主役を務めたお気に入りのひとりです

 

「新参者」シリーズは大好きで、映画やドラマだけでなく原作も何度か繰り返し読んでおります。ミステリーとしての謎解きはもちろん、過去の謎があぶりだされていく後半の濃厚なドラマとしての展開は見ごたえがあります

 

 

 

 

「もうすぐ幕が下りますね」

「ええ、やっと下すことが出来ます」

「長い悲劇でしたけど・・・」

 

それは、苦労してつかんだ演出家としての博美(松嶋菜々子)の明治座公演の幕であると共に、長い長い父との逃避行の終わりを意味します。そして、新参者の加賀恭一郎の長い捜査の終了でもあります。親子の絆を見る悲しく切ないストーリーです。単発でこの映画を見ても十分楽しめますが、一連のドラマや映画を見たあとの方が加賀恭一郎への思い入れが違うかもしれません

 

今は亡き母が、かつて胸に抱きしめた”あの雑誌”を抱きしめ映画の幕は下ろされます

 

▲ドラマ「新参者」

▲スペシャルドラマ「赤い指」

▲ドラマ「新参者」

▲映画「麒麟の翼」

 

東野圭吾の〈加賀恭一郎シリーズ〉

1.『卒業』

2.『眠りの森』 *スペシャルドラマ

3.『どちらかが彼女を殺した』

4.『悪意』

5.『私が彼を殺した』

6.『嘘をもうひとつだけ』

7.『赤い指』 *スペシャルドラマ

8.『新参者』 *連続ドラマ

9.『麒麟の翼』 *映画化

10.『祈りの幕が下りる時』  *映画化

*マークが映像化された作品です

東野圭吾の加賀恭一郎シリーズはどれも面白いですが、特に「新参者」が面白い。個人的な意見ですが原作より連続ドラマが面白いです。機会があったら是非どうぞ!

 

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主題歌 JUJUの「東京」

映画とは直接関係はありませんが、このMVがめちゃくちゃいいです。「たおのゆるゆるブログ」で絶対に泣ける!と紹介されたのですが、やっぱり泣けました。是非どうぞ!