7月に「角川映画祭」と銘打って人気コンテストを企画させていただき、その時3位に支持された作品!さらに、自身の「角川映画ベスト10」での1位の作品で、何度も繰り返し観ている大好きな映画です

 

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「蒲田行進曲」

1982年/日本

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映画の花形スターと、とりまきの大部屋俳優の関係と、落ち目の女優との奇妙な関係を映画製作の内幕に絡ませながら描いた人情喜劇の傑作!

 


<監督>

 

深作欣二

 

<原作・脚本>

 

つかこうへい

 

<キャスト>

 

小夏 /松坂慶子

銀四郎 /風間杜夫

ヤス /平田満

 

朋子 /高見知佳

監督 / 蟹江敬三

橘 / 原田大二郎

 

助監督 /清水昭博

トクさん / 岡本麗

山田 /汐路章

トメ /榎木兵衛

勇二 /萩原流行

大部屋A /石丸謙二郎

マコト /酒井敏也

 

ヤスの母 /清川虹子

 

千葉真一 /千葉真一 (友情出演・本人役)

志穂美悦子 /志穂美悦子 (友情出演・本人役)

真田広之 /真田広之 (友情出演・本人役)


 

 


この映画は、つかこうへい氏の作品だと実感しました!

 

つかこうへい氏の原作、戯曲に、メガホンをとった深作欣二監督の会心の一作。「新選組」の撮影真っ最中の京都の撮影所を舞台に繰り広げられる人情味あふれる活劇で、主役の三人がすばらしいですね

 

笑いと涙、義理と人情、すべての要素がつまった映画です

 

物語は、小夏(松坂慶子)のナレーションから始まります

「映画の撮影所というところは、本当に奇妙な不思議な世界です。偽りの愛さえも本物の愛にすり替えてしまい、昼を夜に変えてしまうなど朝メシ前のことです」

このセリフが、ラストの伏線になっています

 

 


この映画の面白さはテンポの良さです!

 

展開が早く、次々に変わる小気味良さ、歯切れの良さが観ていて気持ちいいです。もともとこの作品は舞台ですから、その良さが生かされています。少しクサいオーバーな演技が目立ちますが舞台っぽい俳優陣の熱さがいいです

 

ノンストップでハイテンションな映画で、スタイルは違いますがポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの「スティング」を思い出しました。あまり難しいことは考えず一緒に弾けて観た方がいいと思います。多くの映画人たちがひとつになって映画をつくり上げていく、そんな想いが詰まった作品です

 

「俺ら、始めっから顔なんて映る気はないっすよ。映画がよくなりゃそれでいいんです!」

 

大部屋俳優のヤス(平田満)のひと言が映画に対するみんなの思いを代弁していると思います

 


松坂慶子を見直した映画です!

 

彼女の美しさはもちろんですが、銀四郎とヤスを相手に向こうを張っての体当たり演技は凄みさえありました!

 

「女にはね、いつも一緒にいてくれる人が一番なのよ」

「銀ちゃん一緒にいてくれないじゃない!」

 

「後悔するわよ、きっと!」

「でも、サヨナラ、銀ちゃん!」

 

役者バカの連中ばかりで、不器用にしか生きられない哀しさ、おかしさ、切なさの中、小夏のけな気さが救いですね

 

「今夜は・・今夜は帰ってきて欲しい・・」

 

階段落ちを明日に控えて、自分の気持ちを負えきれないで暴れまくり出ていくヤスに語りかけるセリフの時の小夏が一番よかったですねえ

 

前半は、銀ちゃんのワガママぶり、ヤスのダメ男ぶりなど中心にドタバタで進みますが、小夏がヤスに心ひかれていくあたりから急激に映画が面白くなります

 


銀ちゃんのカッコよさ

ヤスのまっすぐさ

小夏のけな気さ

 

名言連発で、邦画最高傑作に推す人が多いのも頷けます。泣いて笑っての最高のエンターテイメント!

 

「コレがコレなもんで!」

 

小指をたてて、お腹に赤ん坊がいるジェスチャーをして仕事をとってくるヤスが面白いけどカッコいい!


ただ、ひとことでいいから

感じたままを口にしてよ

愛だけがオレを迷わせる

恋人も濡れる街角

 

劇中歌となっている「恋人も濡れる街角」がいいですね

 

 


クライマックスの階段落ち

 

剣を片手に両手をあげて大階段を登っていく銀四郎・・・

雪の中を歩く小夏・・・

 

銀四郎に斬られ、大階段から転げ落ち動かないヤス

「あんたー」と小夏の絶叫

 

やがて最後の力を振り絞って階段を這っていくヤス

 

「這ってこい!上がってこい!」

 

「いいぞ、ヤス!上がってこいヤス!」

「お前は志半ばで倒れていく勤労の志士だ!簡単にくたばるな!上がってこい!」

 

「そうだ、ヤス、上がってこい!」

 

銀四郎を見上げてヤスが一言

「銀ちゃん、かっこいい」

 

「ヤスー!」と駈け寄る銀四郎

 

「あんたー」 雪の中で倒れる小夏

 

有名なシーンで知っている人も多いと思いますが、それぞれのカットが素晴らしいです!

 


古典的かつ普遍的な作品!

 

エネルギッシュで、作品全体にパワーで押し切られます

 

映画はスターだけでは成り立たないという、いわゆる反権力や弱者をテーマにしています

 

主題歌の「蒲田行進曲」を聴いて昭和を思い出すのは自分だけですかねえ(笑)ご存知のように、この曲はJR蒲田駅の発着曲に使われています

 


ラストに演出がいいです!

賛否はあるでしょうが、もともと舞台でのカーテンコールの意味で、映画として「おわり」の演出でいいと思いますよ

 

まさに映画賛歌の作品!

この年の日本映画賞を総ナメにした傑作です!

是非ご覧ください