Chapter _ 3 事件の手がかり

穏やかな週末の朝。

 

私の眠りを破ったのは、天使の囁きのような鳥の声でも、冬を春へと誘う暖かな日の光でもなく——
やかましい電話の呼び出し音だった。

 

「リリリ… リリリ…」

 

目も開けられないまま、私は手探りで受話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。

 

「……もしもし」

 

まるで一晩中タバコを吸っていたかのように、声はしゃがれ、かすれていた。

 

「ジュヨル、俺だ。ギホン先輩だけど、今話せるか?」

 

電話の主は、クラブの会長であるギホン先輩だった。

 

「はい、会長。どうされましたか?」

 

重い体をようやく起こし、ベッドの上に腰を下ろした。

 

「今日は一緒に行ってもらいたい場所があるんだ。来られるか?」

 

「どちらへ行くんですか?」

 

「……イェビンの事故現場だ。」

 

今日は部室で事件資料を確認するつもりだった。
そんな中、被害者が亡くなった“現場”へ直接行けるというのは、願ってもない機会だった。

 

「わかりました。何時にどこへ行けばいいですか?」

 

「大公園に、午後1時までに来られるか?」

 

大公園なら家から近い。準備の時間は十分あった。

 

「わかりました。では、あとでお会いします。」

 

「ありがとう。じゃあ、また後で。」

 

通話が切れ、私は昨日の出来事を静かに頭の中で整理した。
被害者の家へ向かう以上、事件の流れと概要を正確に理解しておくべきだと思ったからだ。

 

まるで受験前に、自分に必要な情報だけを反芻しながら整理していくように。

 

昨日読んだ事件内容を思い返しながら、私は浴室へ向かいシャワーを浴びた。
シャワー中も、被害者の家で確かめたい点を順にまとめ、
着替えるときも同じことばかり考えていた。

 

その後、大公園の周辺まで歩いて行き、会長を待った。
公園はあまりにも静かで、普段なら四月や九〜十月の週末は家族連れやカップルで賑わっているはずなのに、
今は枯れ枝のように、人影すら見えなかった。

 

少し離れた場所から、クラブ会長がこちらへ歩いてくるのが見えた。
その姿は、今の公園の寂しさとどこか重なって見えた。

 

「ジュヨル、待たせて悪かったな。寒かっただろう?」

 

「大丈夫です、会長。すぐ向かいましょうか?」

 

私の返事に、会長は無言で歩き出した。
イェビン先輩の家へ向かう道すがら、私は先輩に一言も質問しなかった。
先輩もまた口を開かず、ただ街の遠い雑踏だけが静かに響いていた。

 

数度路地を抜けると、一つの建物が姿を現した。
そこで会長の足がふっと止まった。

 

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