2023年1月。
春にはまだ遠く、手も足も赤く染まるほどの冷え込みの中、
俺は胸を高鳴らせながら、大学の象徴でもある背の高い銅像を見上げていた。

 

横を通り過ぎていくのは、寒さに震えながらも短いスカートを着こなす女子学生、
スラックス姿の男子学生、そして新入生を迎えるために気合を入れた復学生たち。
さまざまな学生が、ひっきりなしに行き交っていく。

 

――はぁ……12年も学校に通ったのに、また4年も通うのかよ……

 

「おい、ハン・ジュヨル! 何してんの?
まさか“大学生って現実感ない……”みたいなドラマっぽいこと考えてないよな?」

 

「うるさい。寒いんだから、とっとと入るぞ。」

 

この友達はク・ミナ。
俺の学生時代を共に過ごした親友で、幼いころから家族ぐるみで仲良くしてきた。
俺たちは親の影響もあってか、推理小説を読み漁り、事件の手伝いをしながら育ってきた。

 

……え? 俺の両親が何をしている人たちか気になるって?
それを今バラしたら面白くないだろ。
その話は後のお楽しみだ。とりあえず今に戻ろう。

 

「っていうかさぁ……なんでお前、大学まで一緒なんだよ。
もっと別の学科に行けよ。」

 

そんなふうに言い合いながら、俺たちは軽口を叩きつつ正門をくぐった。
春の気配にはまだ早く、両脇に並ぶ木々には防寒の布が巻かれ、枝は青さの欠片もなく乾いた音を立てている。

 

その木々の間には、いくつものサークルの横断幕が掲げられていた。
その中の一つ、古びた横断幕にはこう書かれていた。

 

「来たれ、事件はいつも君のそばに」
「推理サークル 部員随時募集」

 

――大学に推理サークルなんてあるのか。脱出ゲーム的なやつかな?

 

そんなことを思いつつ横断幕を後にし、俺たちはそれぞれの講義棟へ向かった。
俺は「トンベッ館」という建物に入り、まっすぐエレベーターへ。

 

そのとき――

 

「ねえ、聞いた? うちの学科のイ・イェビン先輩、いるじゃん。
ここ数日学校来てなかったけど……自分の部屋で首吊って自殺したって……」

 

すぐ脇で、先輩らしき学生たちが話していた。

 

まとめるとこうだ。

 

学科でも優秀で、教授たちにも評価されていた3年のイ・イェビン先輩が、
自室で自殺しているのが発見されたという。

 

机の上には
「私は罪人です。私の罪は死によって償われます。」
と書かれた紙切れが一枚。
傾いた椅子。
血の跡などはなく、床はただ静かに濡れていたらしい。

 

警察は他殺の形跡が一切ないことから、
事件を「自殺」として処理した――という話だった。

 

「でもさ、その先輩……この前、同じサークルの工学部のキム・サラン先輩と喧嘩してなかった?」

 

「えー、まさか。ないでしょ〜。」

 

――チンッ。

 

話している間にエレベーターが5階から降りてきて、
俺たちは乗り込んだ。
1階……2階……そして3階へ。

 

扉が開くと、
「2023年度 国文学科入学おめでとうございます」
と書かれた立て札が目に入り、横には案内用の矢印を掲げた先輩が立っていた。

 

俺は軽く頭を下げ、矢印の示す方向へと歩き出した。

 


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