気象予報士のさくらコラム -2ページ目

桜の満開までは長期化傾向

佐藤大介です。今年は桜が長持ちしていると耳にしますが、本当にそうですね桜

$気象予報士のさくらコラム
(写真は関東近郊某所のソメイヨシノ)

統計を取ってみると、最近の桜は早めに開花して、満開までの期間は長くなる傾向にあることが、わかりました。

今年、東京は開花から満開まで10日。ここ10年の平均が7日ですから満開までも3日長く、満開後に一気に桜を散らすような大風もなかったので、都内では今でも、かなり花弁の残っている桜の木を見かけます。

ちなみに今年、ソメイヨシノの開花から満開まで一番長くかかったのは、松山で19日間でした。(4/12現在)

このままいくと、これは記録のある過去10年間で最長の記録となります。

最近は、西日本を中心に、この開花から満開までの期間が、長期化しています。

西日本では、満開までの日数平均が8.7日に対して今年は12.5日と、4日ほど長くかかり、今まで満開を迎えた地域全体で見ても、10年の平均が8日に対して、今年は10.4日、去年は11.3日でした。

一昨年までは関東から西の地域で、開花から満開までの期間が、10日を要した年はありません。

つまり、、、

『開花は早まる傾向にあるが、開花から満開までの期間は長くなってきている』

というのが最近の傾向と言えそうです。もっと言えば、

『桜を楽しめる期間が長期化している』

とも言えます。
これは冬から春にかけて寒暖の差が大きく、暖かい日が早くやってきて花は早く咲くけれども、早く咲くと、それはまだ寒気も降りてくる時期ですから、強い寒の戻りもあり足踏み状態が続く、といったことだと考えられます。

桜好きの自分にとってはうれしい半面、やはり気候が急に変わってきているとも考えられるので、そうのんきなことばかりは、言ってられないですね。



さて、これまでに咲いたところでは、そろそろ桜吹雪も終わりというところもありますが、さくら前線はみちのく入りして、北の地方ではいよいよさくらの季節の幕開けです桜

北日本の開花予想は今のところ、平年よりやや早いくらいで、西日本のときのように極端に早いというところはありません。北の大地でも、5月の大型連休の頃には綺麗な桜が楽しめそうです。


お花見からゴミの山

弓木春奈です。

お花見シーズン真っ只中!

東京のお花見名所、
上野恩賜公園では、約1200本の桜が咲き誇ります。
今年もとても賑わっているようですが、
昨年の桜まつり期間中(17日間)は、
159万人もの人が訪れました。

人出とともに増えるのが、ゴミの量。
レジャーシートや空き缶、紙皿、紙コップ、
食べ残しなどが多いようです。

昨年は、桜まつり期間中に185トンのゴミが出ました。
町中を走っているゴミ収集車(2トン車)、約90台分に相当します。
また、桜一本あたりにすると、
154キロのゴミの山!
前年と比べると、30万人ほど人出は減りましたが、
ゴミの量は、ほぼ同じでした。


同じく都内の井の頭恩賜公園では、
お花見期間中(17日間)に、660立法メートルのゴミが出ました。
桜一本あたり、
家庭用ポリバケツ(45リットル)、約30個分!
$気象予報士のさくらコラム


これらの処理は税金で行うことになります。
上野恩賜公園では、昨年530万円もの費用がかかったということです。

今年は、お花見期間が長いため、
お弁当やビールなどの消費は増え、経済効果が期待できますが、
ゴミの処理には、莫大な費用が予想されます。
お花見は、実は見えない所でお金がかかっているのです。

「開花」の話

$気象予報士のさくらコラム
▲ 大阪、開花を観測した3/21の桜の標本木。5~6輪以上の花が開いています。

片平敦です。

桜の開花も前半戦が終了したところ桜

きょう3/29の10時現在、北海道~九州にある56の気象台・測候所のうち、
およそ半分の29地点で「開花」が観測されています。
(沖縄・奄美は早咲きのヒカンザクラが対象なので除きました)

   桜     桜     桜

そんな気象台の「開花」の基準ですが、観測対象にする木が、
「5~6輪以上 花が開いたとき」ということ、ご存知ですか??

1輪開いたときでいいじゃないか?!とお思いかもしれませんが、
生き物相手のこと、間違えてひとつだけ咲いてしまうこともあるかもしれません。

桜の場合はあまりないですが、他の植物だと、
一輪だけ他の枝より早く開いてしまう、ということも結構あること。
バランス良く「開花」を観測する際には、複数の花が開くのを基準にする必要があるんですね。

   桜     桜     桜

ではなぜ「5~6輪」なのか?実は、結構ややこしいいきさつがあり…。
以前、気象庁の生物季節担当の方に教えていただいた話です。

もともと、気象台における植物の「開花」観測の目安は「数輪以上」。
これは今でもツバキやサルスベリなど、ほかの植物では変わりません。

しかし、古い地点では1953年から観測をしているなかで、
数輪の「数」という表現がややこしかったようで…。

開花の目安を「2~3輪」としていた地点と、
「5~6輪」としていた地点とがあり、
それぞれの気象台によって「数輪」の数字の解釈が違っていたんです。

社会的に影響が大きい「桜の開花」に関しては特に、
地点によってその数が違うのは、具合があまりよろしくない…。

気象庁で調べたところ、「5~6輪」で観測している地点が多かった、ということで、
2003年からは全国統一、「開花」観測は「5~6輪以上」が目安、となったわけなんです。

   桜     桜     桜

ただし、あくまでもこれは「目安」です。

ソメイヨシノではまずないと思われることなんですが、
「5輪に達する前に、先に咲いた花が散ってしまい、
 後から次の花が咲いてきたとしても、いつ数えても5輪に達しない」という場合、
その木はいつまで経っても「開花」が観測されないことになっちゃいます。

自然相手のこと、「目安」はあるわけなんですが、
周囲の状況を見たり総合的に判断して、最終的には現場の観測者の判断で、
気象台では「開花」の観測を行っているそうです。

デジタル、数字…と叫ばれる時代ですが、
なんとなくこんなアナログで曖昧な部分が残っているのも嬉しいですよね。

   桜     桜     桜

東日本や北日本ではまだまだ開花が始まったばかり。
ちらほら咲いている桜を見上げて、
観測者になりきって、「開花かな?」と自分なりに判定するのも楽しいかも…桜