宇宙桜~サクラのチカラ~ | 気象予報士のさくらコラム

宇宙桜~サクラのチカラ~

小野塚千恵です。

きょう4月19日、宇宙飛行士の山崎直子さんが地球に帰還されますが、
『宇宙桜』というものをご存じでしょうか?

『宇宙桜』は2000年にスペースシャトル「エンデバー」で
毛利衛さんとともに宇宙を飛行し、
地球へ戻ってきた桜の種子を各地へ贈り、
地球上で咲いている桜のことです。

埼玉県川口市の科学館・太陽の広場にある宇宙桜は、
山崎さんが宇宙に飛び立った4月5日ごろから、
まるで山崎さんの旅立ちを祝うかのように次々と開花しました。

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〈宇宙桜:川口市立科学館より)

科学館職員の方によると、今シーズンは花持ちが良いとのお話でした。


~新発見!長持ちの法則~


東京の桜も今シーズンは、とにかく長持ちしました。
満開を過ぎても花持ちが良く、
3週間ほどお花見を楽しむことができました。

ただ、気温の変化が激しく、
凍えるような寒さの中でのお花見姿をたくさん見かけました。
それもそのはずで、日々の気温変化が8℃以上※も
落差のあった日がなんと3月中で4日もありました。
(※最高気温における前日との差)

もともと春は気温変化が大きいのですが、
それでも一日で8℃以上も変化するというのは、
たった一日で2カ月分も季節が行ったり来たりしていることになります。

そこで、花持ちの良さは、この気温の乱高下にポイントがあるのではないかと考え、
過去約30年にさかのぼって検証してみたところ、とある傾向が浮かんできました。

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(世田谷区池尻の桜)

今シーズンと同様に、開花から満開までに長くかかった年(10日以上)には、
約70%もの確率でこの『日々の気温差8℃以上』の法則が当てはまるのです。


~桜の本能ってホント?!~


ただ、私たちが注目する温度の裏には、桜が持つ、
植物本来のチカラがあるのではないかとも思うようになりました。

実は、ソメイヨシノは、クローン種であるため、自家受粉をしています。
つまり受粉のために虫を必要とせず、自己完結で受粉をおこなっているのです。
(なかには受粉せず、実をつけないソメイヨシノも多いです)

しかし、原種の桜は、温かくなり、虫が現れて受粉がおこなわれます。
そのために、急に寒くなったりせずに、温かさが定着するまで長持ちして、
虫たちを待っているのかもしれない…そんな風にも考えるようになりました。

つまり、人間が見ている温度の裏には、桜の植物本来の姿として、
虫をよんで実をみのらせたいという本能が、潜んでいるのかもしれませんね。