「開花」の話

▲ 大阪、開花を観測した3/21の桜の標本木。5~6輪以上の花が開いています。
片平敦です。
桜の開花も前半戦が終了したところ

きょう3/29の10時現在、北海道~九州にある56の気象台・測候所のうち、
およそ半分の29地点で「開花」が観測されています。
(沖縄・奄美は早咲きのヒカンザクラが対象なので除きました)

そんな気象台の「開花」の基準ですが、観測対象にする木が、
「5~6輪以上 花が開いたとき」ということ、ご存知ですか??
1輪開いたときでいいじゃないか?!とお思いかもしれませんが、
生き物相手のこと、間違えてひとつだけ咲いてしまうこともあるかもしれません。
桜の場合はあまりないですが、他の植物だと、
一輪だけ他の枝より早く開いてしまう、ということも結構あること。
バランス良く「開花」を観測する際には、複数の花が開くのを基準にする必要があるんですね。

ではなぜ「5~6輪」なのか?実は、結構ややこしいいきさつがあり…。
以前、気象庁の生物季節担当の方に教えていただいた話です。
もともと、気象台における植物の「開花」観測の目安は「数輪以上」。
これは今でもツバキやサルスベリなど、ほかの植物では変わりません。
しかし、古い地点では1953年から観測をしているなかで、
数輪の「数」という表現がややこしかったようで…。
開花の目安を「2~3輪」としていた地点と、
「5~6輪」としていた地点とがあり、
それぞれの気象台によって「数輪」の数字の解釈が違っていたんです。
社会的に影響が大きい「桜の開花」に関しては特に、
地点によってその数が違うのは、具合があまりよろしくない…。
気象庁で調べたところ、「5~6輪」で観測している地点が多かった、ということで、
2003年からは全国統一、「開花」観測は「5~6輪以上」が目安、となったわけなんです。

ただし、あくまでもこれは「目安」です。
ソメイヨシノではまずないと思われることなんですが、
「5輪に達する前に、先に咲いた花が散ってしまい、
後から次の花が咲いてきたとしても、いつ数えても5輪に達しない」という場合、
その木はいつまで経っても「開花」が観測されないことになっちゃいます。
自然相手のこと、「目安」はあるわけなんですが、
周囲の状況を見たり総合的に判断して、最終的には現場の観測者の判断で、
気象台では「開花」の観測を行っているそうです。
デジタル、数字…と叫ばれる時代ですが、
なんとなくこんなアナログで曖昧な部分が残っているのも嬉しいですよね。

東日本や北日本ではまだまだ開花が始まったばかり。
ちらほら咲いている桜を見上げて、
観測者になりきって、「開花かな?」と自分なりに判定するのも楽しいかも…
