こんにちは!
きのう行ってきた「かこさとしの世界展」。前売り券を買っていたのですが、短大以来の友達が見せてくれたグッズ画像で火が付いた!
グッズはもちろん素晴らしかったのですが、それ以上に、原画展として、かこさとしというひとを知る展覧会として見ごたえがありました。図録の帯で知ったのですが、巡回展でひろしま美術館を皮切りに、京都、東京、名古屋とまわってきて、東北は盛岡が初!(たぶんコロナ禍で予定が中止された会場もあったのかもしれません)

 

 
会場となっている盛岡市民文化ホールはマリオスの通称で知られています。ちょうど私が花巻ポリテクセンターで旋盤工をやっているあたりに建設中だった気がします。

 

 
図録が売られているかどうかは事前にはわからないし、図録と展示のキャプションが同じとは限らないので油断せず(?)、気になる展示についてはキャプションをスマホにメモしつつ見ていたのですが、
この図録がグッズコーナーにあってうれしい。すごくいい図録です。巡回展なので、盛岡会場では展示しなかった作品も収めてあって、悔しいというより、勉強になりました。
 
 
 
かこさとしの世界展では有名な絵本の原画展示もありましたが、その絵本の世界に行きつくまえにかこさとしというひとがどんなふうに絵と出合ったか、子どもたちとの交流や活動を丁寧に紹介していて、そこがみどころのひとつです。
 
上は中島哲(なかじまさとし)という署名がある、『過去6年間を顧みて』という11歳の時に書いた回想の挿絵です。
 
この本も売っていたのですが、今回は買い忘れてしまった…だって買いたいと思った絵本が目白押しすぎたんですもの。
 

 

 
1958年「幸せの歌」。
若い頃の作品、水彩画で「第七回職場美術展」に出品され、義妹ふたりにモデルを務めて貰って描いたそうです。
私が中高時代、よく読んでいた作家の作品によく合唱や歌う場面があり、なんでそんなに歌うのがすきだったんだろう、と素朴な疑問でした。
 
戦争中の音曲はすべてご法度で、灯火管制で重苦しい時代を潜り抜けて、明るく自由にものを言えて、音楽も美術も、好きなことがやれる時代が来たという解放感は、生まれた時からすべてがあった私には想像のかぎりをつくしても理解できない、歓喜だったのだと思います。この絵にはその喜びが込められていて心打たれるのです。

 

 
1958年 日雇老人の像
 
こちらは背景もあっさりとして、横向きの老人(いまの私から見たら老人というより壮年ですが)の腿に置かれた手がしかし働く人の手ではない気がします。老人に仮託したかこさんの心が描かれているのではないでしょうか。工事現場で働く同僚や仲間をさかんに描いたと解説にはあり、当時かこさんも現場で働いていたことを知りました。
1958年は東京タワー竣工の年でもあります。
 
この絵は絵本「だむのおじさん」1959年 への流れを感じます。
「だむのおじさん」はかこさんの工学を学んでいたという一面と実際に労働現場で働き、スケッチを重ねていたというリアリティと人間と自然に対する深い共感を感じて、素晴らしい原画でした。
 
私はなにげなく描かれた赤まんまやエノコログサ、トンボなどの自然に心惹かれました。

 

 

かこさんは少年時代、士官学校を志し、しかし視力が低く挫折したということを、戦後、自分も軍人になろうとしていたと深く絶望しました。
いまの時代の私たちには想像もつかないことですが、良心的なひとであればあるほど、それは許せないことだったのかもしれません。
東京帝国大学工学部を卒業後、昭和電工に入り、人形劇団プークとの出会い、川崎セツルメントへの参加がかこさんと子どもたちの心に届くものをつくりたいという気持ちを生み、
 
この時代セツルメントで紙芝居50冊をつくっています。
 
ウクライナ民話の「てぶくろ」は私たちは福音館書店の絵本のあの絵でおなじみですが、
 
かこさんは20代から取り寄せていた欧米の雑誌で読み、自分で翻訳してこの紙芝居を仕立てたそうです。いろいろすごい…。
 
この紙芝居の展示もよかった…。
 
 

 

 
原画のほうに、かこさんが模写した名画や彫刻があったので、こちらの2冊には収められていないのですが、たぶん、こういう会場でもないとなかなか自分は手に取らないのではないかと思って、グッズショップで買ったものです。

 

 
かこさんはシャガールやダリ、ミロが好きだったそうです。意外といえば意外!
 
工学博士の顔を持ち、また中学から夏目漱石など文学にも耽溺し、幼年期にだった絵のうまい「アンちゃん」の影響で以来ずっと絵を描くことが好きだった、そんなかこさとしの絵画と彫刻の案内書。買って後悔しません。
 

 

 
汚れていてすみません。これも会場で売っているかなと思ったのですが、なかったみたい。この本で私はかこさんの幼年時代からセツルメント運動のこと、40年後の続編を出した「からすのパンやさん」のことを知ったのですが、
 
この本にも書かれていた、東北大飢饉に何かしなきゃと思った少年時代のかこさとしが、友達3人と語らって近所の納豆屋のおばさんから納豆を下ろしてもらって、1週間それを売り歩いて稼いだお金を新聞販売店に持って行って、送ってもらうよう頼んだ、
 
というエピソードが『ヒガンバナのひみつ』の原画のキャプションにもあり、

 

 
あれ?どこかでそんなマンガを読んだぞ?と思ったらかこさとし自身のエピソードでした。
 
なぜか私の中で、矢口高雄さんの絵になってしまっていたため、
えー、矢口さんは秋田生まれだし、どのマンガ家さんが描いたエピソードだったかなあ、みんな納豆売って寄付していたんだなあとさえ思ってしまった笑。
そのくらい、かこさとしさんの文章は印象的で、絵に起こしやすいということかもしれません。
 
かこさとしの世界展の魅力は語りつくせません。

 

 
グッズショップで買ったマグカップ。これはほんとうに可愛い。小さな子どもはいない私ですが、これに温かいミルクを注いで、菓子パンをたべたい。いやハード系パンでもいいですけど。

 

 
からすのパンやさん。ちなみに、
 
カラスのパンやさん だと嘴の鋭い野生カラスがイメージされ、カタカナ率が高くて冷たい印象。からす と ひらがなで書くと優しい感じがしますよね。漢字ひらがなカタカナの表記が選べる私たちはその微妙さを感じ取って楽しんでいるのです。
 

 

 
このクリアファイルはからすの子どもたちが大活躍で楽しい。
 

かるたと一筆箋。
 
ほかに可愛いTシャツや食器もいろいろありました。
原画展に行くとなぜか絵本は買わないのですが(原画があまりに良すぎて印刷された絵本が見劣りしてしまう…すみません)、
 
かこさんの場合は絵本で読みたい!という気になってしまうのが不思議です。
 
お近くの方はこの機会にぜひ。
 
ではでは♪