スーパーの本・雑誌コーナーを通りかかったら、ピカーッと光って見えた本書。
これまで自分には縁のない固い、政治や社会情勢の雑誌だと思っていた雑誌ですが、
パラパラ読んだら、「ペコロスの母に会いに行く」の岡野雄一さんの記事がけっこう大きく、買って家でじっくり読もうと。
「ペコロスの母に会いに行く」は思い出してもいい映画でしたが、原作をまだ読んでいなくて申し訳ない。
でも映画の中でも岡野さんの描くお母さん、みつえさんやペコロスの岡野さんに出会えたので、もう読んだような錯覚に…。
映画の場面を思い出したりして、父のことを重ね合わせて読んでいたのですが、
現在岡野さんのお母さんは90歳になり、「胃ろう」をやっておられるとのこと。
胃瘻、胃の穴という意味ですが手術で胃に直接高濃度のリキッド状栄養食を流し込むための穴を作るんです。金属の口みたいな。
そこに点滴みたいに高いところからリキッド栄養食を管で流してお食事にするわけで。うちの母親が胃瘻でした。母の場合は筋無力症と同じ系統の神経系の病気で嚥下障害がひどく、水分さえ摂れない状態だったので…。
空腹感はないですが、食事の楽しみを一切奪われるのですよ。でもやらないと餓死なんですけど。
あまり気を使うタイプではない親戚がいちいち大げさに母をみて、骸骨のようだ、なんたら痩せたこと、と慨嘆するのにムッとしていたことも思い出しました。
胃瘻の手術を勧められたのに、手術拒否で退院したために痩せこけてしまったんです。けっきょくなにも口にできなくて、手術を他の病院に入ってすることになったんですが。
岡野さんの記事を読んでいて衝撃だったのは、
「スタッフの方がたまにアイスクリームやプリンなどを、ものすごく時間をかけて食べさせてくれるので、食事をするという楽しみを何とか奪われずにいられます」
え!
少しの水でも入ると肺炎になると言われて、栄養はすべて管を通していましたが、
アイスクリームとかプリンなどならよかったのか?そりゃあどちらも高濃度栄養リキッドに違いものはあるけど。
ちなみに母は蜜柑を欲しがってました。絞った汁をスプーンでゆっくり飲ませてあげるくらい出来たのかも、と思うとそんなことを全然考えず、
食べる楽しみを根こそぎ奪っていたんじゃないかと。
一滴でも誤嚥で気管に入ると肺炎になると思っていた。あーーー。知らない方が幸せだったか。いやそんなことはない。
「親がボケたせいで自分がしゃかりきになって、無理をして一緒に共倒れするよりは、世間から何と言われてもいいから「自分達なりの距離」を保ち、きちんと地に足をつけている方が絶対いいと思います。
自分が楽であれば、きちんと面倒を見られるんです。」
この言葉が楽にしてくれたから。
分厚い一冊で、その厚さがむしろうれしい。
読んで辛い記事もありますが、知らない方がいい現実なんてないですもん。
きっと。