ふー。
って、リュックを背負った息子を小学校まで送ってきて、
「シロアリ」を読む私。
「シロアリー女王様、その手がありましたか!」 (岩波科学ライブラリー202) 松浦健二 2013年
いずもり・ようさんの脱力系のイラストも可愛らしく、
巻置くあたわず、って感じ。
天気がいいから洗濯物をはやく干してしまいたいところなんだけど。
シロアリがアリじゃなかったというのも初めて知った。
(黒)アリは羽根のないハチ、
シロアリは社会性を高度に発達させたゴキブリ…。え!
作者の松浦健二さんは小学3年の時に友達と遊んでいる時にシロアリの巣をみつけて、
わー、こりゃなんだ、とシロアリの生態に魅せられ、
6年生で岩田久二雄の「ハチの生活」と出会ったことで進路を決めてしまう。
「ファーブル昆虫記」の読後感がヘェ~なら、「ハチの生活」は「ドッカーン」だと言い切っている。このわかりやすい喩えもいいですね。
私は根っからの理科嫌いなのですが、その私でさえ、夢中で読みふけるというのは、
松浦さんの文体が心地いいからであります。晴れた秋の日にひんやりした森の中に入って行くような気持ちよさ。
理科は嫌いだが自然はすきなんですわ。
6年生の松浦少年は岩田久仁雄、今西錦司に憧れ、よし、京大農学部の昆虫学研究室に行くぞ、
と決断し、現在に至る。
サッカー少年が花園行くぞ!野球少年がメジャーリーグに行くぜ!
明治生まれの絵の好きな少年が美術学校(東京芸大)に入るぞ!
というようなものであろうか。
とにかくシロアリである。
シロアリは発生学的には幼虫のままなので、その動きもアリに比べてあどけなく可愛らしい。
と言われるとだんだんその気になるじゃないですか。ああ、シロアリって可愛いんだ~と。
その可愛いシロアリがゴキブリ科の中に入っており、実験などでゴキブリを使わなければならないことがあるのですが、
松浦さんはゴキブリがおキライだ。コワイらしい。仕事でどうしても触らなければならない時は、
「これはゴキブリじゃない、大きめのシロアリなんだ」と心の中で言い聞かせる、まるで「動物のお医者さん」の二階堂みたいに。ネズミが苦手な二階堂はネズミをリス(尻尾は剃られたの)と思って苦しい実験をやりすごしたのでしたが、
その道の研究者でも苦手な昆虫はいるんだと思うと親しみがわきます。
広くイモムシ型の幼虫が苦手な私は「はらぺこあおむし」が苦手でしたが、
「おいしいものをたべたあおむしはクロワッサンになったの!これは蛹じゃないの!」と思ったり、
なんとか絵本のなかのあいつと目を合わせないようにして急場を凌いだことが。カラスアゲハの幼虫じゃなくてよかった。
理科嫌いではありましたが、遺伝はわりあいすきな単元だったので、
シロアリのコロニーの遺伝子や女王のフェロモンの話はおもしろかったです。
シロアリの女王様からはワインの香りのフェロモンが出ていて、それがおなじ巣のワーカー(オス・メスいる)たちの女王への分化を抑制しているんだそう。
また、
シロアリは巣の創設王と創設女王がいて、有性生殖と単為生殖を使い分けているんだそうですが、
女王様は自分の遺伝子だけを持つ娘に二次女王になってもらいたい。
有性生殖によって生まれた娘は女王フェロモンによって、
ワーカーに分化し、単為生殖の娘は女王フェロモン受容体がないので、ワーカーになることはない…。
この親バカ操作についてはまだ仕組みが解明されていなくて、遺伝子刷り込みの可能性が考えられているそう。
あとがきに、
あと3年でバカボンのパパとおなじ年齢になってしまう38歳の秋、とあり、
思わず吹き出したのですが、
ユーモアのある文章とイラストのおかげで楽しくシロアリとお知り合いになれた気がします。
それにしても単為生殖の二次女王とか、なにかこう、人間社会に置き換えたらどうなのこれ、というエピソードが多く、考えさせられました。
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