芸術ウソつかない 横尾忠則対談集 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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「芸術ウソつかない 横尾忠則対談集」(ちくま文庫) 2011年 *2001年平凡社刊行

岩手県立美術館の「横尾忠則ポスター展」があって、

その企画イベントのトークショーで、横尾さんの話すことが興味深くて、

以来横尾忠則の本をみつけると読んでいる。おもしろいんだもん。

講演で言っていた、美術とは先にあるいい絵を真似ることだと幼い頃から思っている、

という言葉が言葉は平易なのに奥が深く、翌日は天野祐吉さんとのトークショーもあったので、すごく聞きたかったのだがたぶん、マラソンがあってそっちに行った私です(笑)。


んー、マラソンと美術展って重なると悩むなあ。

と思っていたらこの対談集に、

増田明美さんとの対談も入っていて、もちろん真っ先に読みましたとも!


対談した時期はちょうどシドニーの前で、

女子マラソンに出場する山口衛里選手が横尾忠則さんの高校の後輩ということもあり、

増田さんの選手たちへのエールと評価というか、選手の個性を語った言葉がおもしろかったです。

この時の女子マラソンについては、村上春樹の「シドニー!」も重ねて思い出されます。

「シドニー!」のなかでは高橋尚子は天才肌で、有森裕子(シドニーの選考には落ちたのでしたが)は努力家でふつうのひとにちかい感受性だな、と思っていましたが勘違いでした(笑)。

増田明美アイが捉えた有森裕子さんは、自信があらゆるものを自分のエネルギーに変えることができるひと。


アトランタでは看板のひまわりを、自分のために応援のひとが描いてくれたんだわと思い、

バルセロナでは「アニモ」「アニモ」をみんな私のことをわかって応援してるのねと思う。じつはアニモってスペイン語で「がんばれ」…。

有森裕子さん、いいなこの性格。私もわりにそういうところがあり、勝手に応援されているーとか、神様に贔屓されてるなあ!と思ってきました。

横尾忠則さんにいわるとそれは、


仏教でいう「他力」だと思うということで、「他力・自力」がひとつになると思わぬパワーが出ますから、という言葉も興味深かったです。


横尾さんはマラソンと芸術には共通点があるのではないかと考えて、増田明美さんに走っている時どんなことを考えているかを聞いています。

そこから横尾忠則さんがマラソンに感動を求めていて、

優勝した人だけではなく、ズルズルと後退していっても、できるだけのことをやったがこうなったという無念の感情を受け取って心を打たれることもあると語り、


増田明美さんも、

中継でも落ちていったひとの絵をあまり流さないぇれど、

選手ひとりひとりにドラマがあるので、それをつたえられたらいいなあといつも感じていると話し、

人生でもトップを走ってて一度そこから外れた時にどう受け止めるかどう踏ん張るかが面白いんですからと語っています。


練習で好記録(2時間25分)が出た後に精神と体のバランスを崩し、出場を断念したという経験をかたり、

スタートラインに立つまでにすでに1ラウンド終わっているという話もレベルもなにもちがうけれど、


わかります!

スタートラインに立てるだけでうれしい、その気持ち。

といっても月に1000kmの走り込みをしていてもレースに週間前に足が痛んだことがあって、

というとシーンとします。月に300kmを目標にして走っていてもけっこう疲れが溜まって行ったのを思い出すと、


1000km?

そして出場断念?

その無念を思うと胸が苦しくなるくらいのものですが、


増田明美さんは自身のことは感情的だからハーフまではいくけれど、冷静さが必要なフルには向いていなかったな、と分析しています。

分析していても、それが淡々として明るく、歯切れがいいんですね。

横尾さんはなにごとについても、素直に受け入れるタイプというか、前に読んだ温泉で絵画を、という本も企画も温泉地も、持ち込まれたものに身を委ねてやっていて、

それがおもしろい作品と文章(横尾さんの文章も独特の味わいがあって中毒になるのだ)になっているので、

流れに身を任せるというところが対談もおもしろくしているのかもと思ったりしました。

ほかの対談相手は、

井上陽水
吉本ばなな
細野晴臣
中沢新一
唐十郎
瀬戸内寂聴
引田天功
横尾美美
三宅一生
ビートたけし
篠山紀信
河合隼雄
鶴見俊輔
福田和也

最後の福田和也さんとの対談で、郷里の西脇を訪ねて、Y字型の路を描きたくなった夜のことを語っていて、

ポスター展にも展示されていた、「Y字路シリーズ」のきっかけはこれだったんだなーと納得したんでした。




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