学校から、退学届の用紙のサンプルが送られてきました。

サンプルは簡単な内容で、この内容を自分で書けばよいとのことでした。

 

退学届

Z高等学校校長殿

x年x組 〇〇〇は、□□□の為、x月x日をもって退学しますのでよろしくお願いします。

保護者氏名 印

 

クラス、名前、理由のところは手書きできるように空白を開けて、そのほかのところをパソコンで作り、ゆっくり時間が取れるタイミングを見計らって、リクに話をしました。

 

「このまま高校残って、もう一度4月からやり直すのもできるよ。」

私は最後の悪あがきで、もう一度言ってみました。

いつもの通り、リクはうつむいて何も言いません。

 

今までリクには、何度も学校に戻る選択肢がある、

学校に戻れば、友だちもできる、中学とはまた違った楽しいことがある、

と言葉を尽くしてきました。

話す前は、こう言ったらリクが学校に行ってみようと思うのではないかという言葉を考え、

話し始めるのですが、話し終わったときには、

全く自分が言いたかったことが伝えられなかったように感じていました。

 

毎回、リクは反応がなく、私もそれ以上言葉が思いつかなくなって会話が終わりました。

 

 

「本当に学校辞めていいの?」

「うん。」

「辞めるなら退学届けを出す必要があるのね。」

 

「これ、学校から送ってもらったの。保護者の名前のところは、私が書くけど、リクの名前のところは自分で書いてくれる?」

 

「クラスわからない。」

(そう言うと思った)

「x組だよ。」

「書いて。」

 

仕方ないので、リクの目の前で、退学届けにリクのクラスと名前を書きました。

「理由はどうする?」

「わかんない。」

「じゃぁ、一般的な『一身上の都合により』でいい?」

「なんでもいい。」

書き終わったのを見て、

「もう行っていい?」

と言って、リクは部屋へ戻っていきました。