1977(昭和52)年刊行の箱入単行本です。中里恒子さんは戦前1938(昭和13)年に『乗合馬車』という作品で芥川賞を受賞されています。僕はついこの間(前回の入院中)芥川全集第2巻でそれを読んだんですが,今はストーリーをすっかり忘れてしまいました。たぶんそんなに印象深い作品ではなかったんだろうと思います。この『時雨の記』は『乗合馬車』が手に入らなかったので,かなり前に買って読もうと思っていたんですが,なかなか読む機会がありませんでした。今回の入院中に暇に任せて読んでみたんですが,正直言って僕の好みの小説ではなかったです。物語は江藤淳さんの解説をそのまま引用すると「『時雨の記』は大磯の山沿いの屋敷に侘住居する四十代の寡婦と会社の社長をしている五十代の男との,ひそやかな恋の物語である。」ということになるのですが,確かにそのとおりなんだけど,僕は主人公の多江という寡婦も壬生という社長もどちらも好きになれないキャラクターでした。多江はおしとやかといえばおしとやかなんだろうけど,それほど魅力的な女性に想われなかったし,壬生はわがままで ただ図々しいだけというかお金に困ることのないドンファン(今ならゾゾタウンの前沢友作さん)みたいな人で,あまり好感が持てるっていう気はしませんね。ま。そんな二人の秘めたプラトニックラブの物語なわけですが,僕にはかなり嫌味っぽく感じられました。これは中里さんの私小説ということらしいですが,もう一度読みたいという小説でないですね。疲れました。
一応読みました。