少年ジャンプなどの漫画が好きで全くのド素人から同人誌を作ることに成功し多くのファンに読んでもらえる方法 -4ページ目

少年ジャンプなどの漫画が好きで全くのド素人から同人誌を作ることに成功し多くのファンに読んでもらえる方法

二次創作した作品や作り方、作品研究についてを
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蔵馬「貴方の美しさを根本的に自覚するとしたら、 君はどうする…?」
飛影「お前はお前らしくあっても、お前らしくあってはいけない、そういうことだ」




ここ数日、どうも調子がおかしい。

飛影は首を捻った。

魔界の空を爛れたような肉片を晒け出しながら、不気味にギャーギャー鳴く鳥が何匹が連れだって飛んでいる。
どこかで腐敗臭がするのも、魔界ならではのこと。そう珍しいことではない。

包帯が取られた右腕に、黒龍の姿はない。

先ほどから何度も放たれているためだろうか。

シュウウゥゥ~

と血液のような色で苔むした岩の一部が白い煙を上げている。それは先ほど、飛影が拳を打ちつけた部分であった。


何故なのか。

その中心を見つめながら、飛影は眉間に皺を寄せた。

特に思い当たることはない。だが、この事態を放置しておいたところで改善に向かう見込みもないだろう。

二日後には躯との手合わせが控えている。

チッ、と舌打ちし、飛影は仕方なくその場を後にし、人間界へと向かった。


***

何もない空き地に突然呼び出された蔵馬が怪訝な顔をして飛影を見た。

「とにかく見て欲しい」

と言う話だ。
こちらの都合をいつも完全に無視している飛影は、常に自分のことで頭がいっぱいである。
蔵馬は会社帰りのスーツ姿のまま、左手に持っていたバッグを地面に置いた。

「約束の場所と時間に来ましたけど?」

呼んでおいて、あることに意識を集中させたまま振り向きもしないので、痺れを切らして蔵馬が声をかけてやると、ようやく飛影がこちらを見た。

「黒龍波が使えない…。妖気の状態が不安定だ。見て欲しい」

蔵馬はため息をつきかけながら、スーツのジャケットだけ脱いで地面に置いたバッグの上に畳んでかけた。

ゴオオッ、と強い風が巻き上がり、すぐに飛影の周りは妖気に覆われる。
だが、確かにそれは普段とは様子が明らかに異なった。
飛影の全身から発せられる妖気自体がいつものような黒い炎ではなく、緑の炎でまとまりにくい、何か別の性質があるらしいことが見て取れた。

「どうしたの? それ…」

「原因が分からないからイラついている。貴様でも分からんか…」

「いつ気づいたのかと、その間に思い当たることで貴方がどこで何をしたか、詳しく教えて頂けます?」

使い魔を届けるのはいいが…。

蔵馬は思い出して、腕を組んだ。

会社にまで、蔵馬を探し言伝(ことづて)を届けるためにウロウロとさまよっていたのを、あまり多くの人間に目撃されなかっただけマシだと考えればいいのだろうか。

使い魔も使い魔で臆病で神経質な者がよこされたため、人間界の魔界とは異なる空気にただひたすら怯えていた。任務とあっては放棄できないため、ますます必死になり、会議中だったというのにも関わらず迷惑極まりないものであった。
そう、全てはこのワガママな主人に振り回されっ放しだ。

「気が付いたのは確か…、3日前…、朝だ」

「で? じゃあ、そうなる以前、貴方はどこで何していたか、思い出せることは?」

「……その前日、確か休みだったな」

「貴方が気がついたとき、すぐに違和感なかったんです? 暫く放置する理由があったんですか?」

「…そのときはまだ、黒炎も黒龍波も使えてはいた。緑の炎が徐々に強くなり始めたんだ」

そうしたら、黒龍波の形すら留めなくなり、気が付けば思い通りにならない緑の炎がゆらゆらと揺れているだけになった。

「…実は、日帰りでどっか行ったでしょ?」

「? 日帰りとは…?」

日が暮れ始め、辺りは夕闇が訪れる。

「最近、休みになる度にどこか散策しに出掛けるらしいじゃないですか」

どこから仕入れた情報なのだろう、と飛影は一瞬硬直したような雰囲気を出したが、渋々それを認めるように僅かに頷いた。

「たまには誰かと一緒に行けばいいじゃないですか」

「うるさいヤツだな。…それで、何が原因だ?」

「おそらく…ですけど、貴方、温泉行きませんでしたか? 確か、幻郷(げんごう)の湯、でしたっけ?」

そこまで言うと、やはり思い当たるところがあるのか、飛影はハッと顔を上げた。

「オレは別に…! お前が以前オレに…!!」

「ふぅ~ん、貴方に使った植物を自分でも調べたかったの?」

飛影は断固としてそれを認めない。別にそれはそれでいいが、尤もらしい別の嘘を用意しておくべきだ。

蔵馬は呆れっ放しだったが、ようやく何かを言う気になったらしい。

「まぁいいですよ。貴方が話したくないのなら、それでね…。ただし、その温泉に何の目的で浸かったかは知らないけど、そこに入ったら、もう一つの、対になっている温泉があるんだけど、それに浸からないと、変な風に貴方の中に作用してしまった働きを止めることはできないからね」

どうやら初耳だったようで、飛影は猫のようにハッと目を見開いた。

「それもちゃんと正確に。もし貴方が10分浸かったなら、10分きっちりで向こうで入ること。そうじゃないと、どちらかの作用が強く影響して、またバランスの悪いことになるよ。その温泉の名は…」

説明を始めようとすると、飛影はもう観念したように蔵馬を止めた。

「理由を言うから…、なんとか戻せ…」

正確に、というのが無理なのだろう。何分浸かったか、などというものは感覚的なものに過ぎないだろうから、一気に自信がなくなったに違いない。

飛影は結局、蔵馬の中の悪趣味な部分を満たすことになったことを悟り、後悔し始めていた。

蔵馬は急に笑顔になり、理由を聞いてくる。

「……誰かの意識を、垣間見たいと思っただけだ……」

「へぇ…。貴方、邪眼つけたのにねぇ…。心まで見たいと思った? 行動だけを見るんじゃ物足りなくなった?」

急に上機嫌になった蔵馬に明らかに悪態づきながら、言いたくもない理由を淡々と言わせられる飛影の瞳が、たまに強く睨みつけるが、本人はお構いなしだ。

「……気は済んだか? どうにか戻せ、と言っている」

「いいですよ。温泉に浸かった理由も分かったことだしね…。貴方を覆っている妖気も、別物になっていることでしょうね」

貴方は炎系の妖怪ですが、それを利用して特に魔界の炎を使っているんだからね…。それ自体が、意識を持っていることは重々承知だよね。
これはオレの推測だけど、貴方と契約している炎が、ふとした瞬間に何かを思い、何かに引き込まれて変質した、ということだろうと思う。
あの温泉、広々としている割には誰も浸かっていなかったでしょう? 誰も浸かりたがらないからね。対になってる温泉に浸からない、となると、元に戻す方法はいくつかあるけど…、どうしたい?

「…一番無難で確実な方法だな…。もう一度、契約し直すには負担がかかり過ぎるからな…」

「そうでしょうね…。今の貴方なら一週間くらいは冬眠するハメになるんじゃないですか? それも一週間で済めばいいでしょうし、場合によっては命を落とすことにもなりかねませんからね」

貴方は黒龍波を失いたくないのに、軽はずみなことは控えた方がいいよ。

蔵馬は口元を笑わせると、目の前の飛影に手招きをした。

「ちょっと場所を移ろうか? その解毒作用のある植物なら別にある…。貴方にもやってもらうことがあるから…」

そう言って踵を返した蔵馬に渋々ついていく。

かれこれ二十分くらい歩かされただろうか。裏山の、更に山奥に足を踏み入れていく。
辺りは真っ暗だ。足を踏み出す度に足下にある木の葉が鳴る。

「この辺にしよう」

ピタリと足を止めた蔵馬が振り返って飛影を見た。

「そこに仰向けになって、大の字で寝てくれる?」

飛影は舌打ちをしたかったが仕方なく、コートをはぎ取り上半身を裸にすると言われた通りに従った。

今度は頭のすぐ横で耳障りな木の葉の擦れ合う音が響く。

「貴方は何もしなくていいからね。ただ少し、そのまま我慢さえしてくれれば…」

地面の中から、何かを突き破るように成長し始めた気配を感じた飛影は頭を起こしかけたが、なんとかその気持ちを抑え、動かないように努めた。

すぐ下に感じる振動から表面の土を突き破って躍り出た大木の根が生きているのかのように蠢き、四方八方から飛影の腕や脚、胴体をがんじがらめにする。

最初から動きを封じるつもりだったらしい。

「あ、動かないでくださいね…。終わればすぐに解放しますから」

蔵馬は少し離れた場所に自ら送り込んだ妖気で浮き上がった樹木を椅子代わりにして腰掛けながら、両手を顔の前で組み、何やら呪文を唱えている。

細い枝が蔓のように伸び、お互いを結びつけ合い、飛影の周りを円形に取り囲む。

魔法陣や呪文の類だと、飛影はすぐに悟った。

それは何かを象ると、単なる植物に全く別の光が宿り、その形が闇に浮き出される。

その途端、飛影の全身から急に妖力が引き出されたように、緑色の炎が天に向かって燃え盛った。
全身から最大限に放出できる妖気が時間の経過ごとに失われていく。
それも自らの意志ではないため、飛影は驚きを隠せず、体も硬直したような状態になった。

「は…、早く解け…!」

一瞬一瞬が体力と妖力を奪っていく。しかも限界寸前の最大出量が体に大きな負担をかける。

少し見とれていたような蔵馬は、そろそろと腕を組んだまま立ち上がると、どこからか取り出したのか、何かの種子か花粉かを手にしたのが分かった。

「条件があります。これを使ってしまうと、予備がないので、貴方に採ってきてもらうことになると思いますが、それでもいいですか?」

この状態で質問するのか、という表情を見せながらも、飛影が燃え盛る緑の炎の中で頷いた。

「戻ってからだ」

「じゃ、約束ですよ」

蔵馬の掌からふわーと拡散した粒子が時々砂光る砂粒のようなものを含みながら、飛影の放っている緑色の炎の中に流れていく。
パチパチッ、とそれはすぐに炎に焼かれ燃えたかと思うと、急に重量を増した黒い粒子へと変質し、緑の炎を少しずつ確実に包み込んでいく。

様子を見ながら蔵馬が粒子を少しずつ増やしていくと、完全に緑の炎が黒煙のように巻き上がった粒子に全て包み込まれた。

「…まだか…」

その得体の知れない妖気の中心にある強ばった体が悲鳴を上げている。

「う~ん、ここからは少しずつ様子見です。…貴方の炎が安定して完全に戻るまでは暫くそのままですね」

「安定…?」

飛影がそう確認した矢先、巨大な妖気が暴走し始め、黒い粒子の間から、時々緑の炎が噴き出す。

「…調整が難しいところなんです。少し、貴方には頑張ってもらわないと。まぁ、妖力を鍛えるにはいい機会なんじゃないですか?」

「貴様だって分かっているはずだ。…許容量を上回る妖気を放出し続ければどうなるかってことくらい……!」

「見たところ、ベストコンディションでもなさそうだからね。でも、貴方が仮に気を失ったとしてもオレは続けるから、そのつもりで」

それから、多分…だけど、黒炎とは対照的な性質があるね。黒炎は妖力を増大させ、爆発的なエネルギーを有するのに対して、これは妖気を注げば注ぐほど、力を失っていくようだ。というより力を奪っていく作用があるのかな。

煩わしそうに、堅く閉じられる瞳。
飛影は唇も堅く引き結び、沈黙した。
というよりも無駄なエネルギーにこれ以上費やせない状態だと言って差し支えないだろう。
裸の胸や両腕にうっすらと汗が滲み出ている。

円陣を描いている蔓を、本能的な最後の抵抗力と称すべきものが無意識に掴み上げたが、それも一瞬の内に崩れ脱力していく。


完全に意識も手放してしまったのだろうか。
だが、どんより鈍っていた粒子の間を縫って、あの見覚えのある暗黒の炎が爆発的に勢いを増し、燃え盛っていく。

ゴオオオォォォオオッッとどこからともなく吹き荒れる風の中に原型の定まらない、憎悪にも似た感情を思わせる荒々しさで、再びその姿を留めている。

だがそれは次第に黒龍の形になり、飛影の頭上に姿を現した。
飛影の肉体を固定している蔓を一瞬で燃やし、ようやく呪縛から解き放たれる。

蔵馬は唇に笑みを浮かべた。

「君も主人に似て、よそ見をする癖があるようだね…。その癖で大事な主人を死なせないか、不安になってきたよ」

「忠誠心などない…。ただコイツの妖気を食らわせて体内に住まわせてもらう条件だ。互いに依存し合ってる一方、隙があれば互いにいつでも命を食らい合う」

「そう…。それでも君が主人を捨てれば自ら生命の源を絶つことになるぞ」

「他の宛てを探すだけのことだ」

黒龍は今まで失われ、命も尽きかけている主人の中に妖気を取り戻すかのように自らが飛影の体内へと飛び込んだ。

「……君は、主人に似てるよ」

蔵馬はふっと微笑んだ。


***

数日後、深い眠りから醒めた飛影が過ぎ去った時間を聞かされ、頭を抱えたのは言うまでもない。

蔵馬「貴方の美しさを根本的に自覚するとしたら、 君はどうする…?」
飛影「お前はお前らしくあっても、お前らしくあってはいけない、そういうことだ」