2018年1月観賞映画ひとことレビュー | ヤマグチトオルの映画漂流記

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月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2018年1月鑑賞映画ひとことレビュー

 

今年も初見映画のひとことレビューを一ヶ月単位でいってみようと思います。

1月の初見総観賞本数は27本。今年も年間300本を目標にしようと思っております。

 

では。今回も劇場観賞を中心に。例によって箸にも棒にもかからないものは書きません。

 

「キングスマン:ゴールデン・サークル」

快作「キングスマン」待望の続編。1作目の悪ノリ感をいいか悪いかは好みがあるのでなんとも言えないけれど、この監督の腕は本当に確か。もともと的確かつ職人芸的な演出ができる監督なので(X-MENを見比べると本当にわかります)今回も普通に作ればそれなりに観られるものができてくるんだろうなあと思っていたのでやっぱりこれも普通に楽しめました。だけど。やっぱり普通に楽しめるそれ以上でも以下でもないというちょっと切ない出来となってしまいました。というか、今回に関してはちょっと気合いが入り過ぎて空回りという感も。本人初の続編と言う事で、やりたい事とか思い付いたことを全部つめこみました的なサービス精神は大いに楽しいのだけれど、だからなのか全体に散漫な印象。とは言えそれぞれのガジェットやらディティールやらは(ステイツマン最高)オタクツボつきまくりの面白すぎるものばかりなので観ている間は楽しいのだけれど、中にはそれがコレジャナイんだよ的な空回りというか、いやそこが観たいのにそっちいっちゃう?という外しがどうも上手くないというか、?な印象。横道を外した独特な世界観とやりすぎの美学をあえて王道の演出で魅せるのがこのシリーズというかこの監督の醍醐味かと思うのだけれど、それが今回に関してはあえて狙いましたという小手先感が妙に鼻についたのは、ある意味この監督がそういう期待に添えるだけの名匠の地位を築きつつあるからなのかとも感じました。兎にも角にもきっとあるであろう3作目に期待しつつ(今度はウォッカメンとか出てくるんでしょうかねえ笑)、マーク・ストロングの復活と今度こそのチャニング・テイタムの活躍を願っております。

 

★★★

 

「ブリムストーン」

一時期話題になった欝西部劇。予告編では美しい映像とともに人間の業を描く的なある意味真面目でシリアスな映画かと思っていたのですが、蓋を開けてみれば変態オヤジ大活躍のバカ映画でした笑。夫と2人の子供と生活し、助産師として人々からの信頼を寄せられているリズ(ダコタ・ファニング)。彼女が暮らす小さな村に、鍛え上げた肉体と揺るぎない信仰心を持った牧師(ガイ・ピアース)が現れる。彼から「汝の罪を罰しなければならない」と告げられ、秘めていた壮絶な過去の記憶がよみがえる。それにまつわる危険が迫っていることを家族にも伝える中、家に一発の銃弾が撃ち込まれ…(Yahoo映画より)もうとにかく牧師のキャラクターがぶっ飛びまくり。神の名の下に自分の欲望を正当化して暴れまくるその姿はハンニバル・レクターに匹敵するほどのインパクト。自分勝手すぎる理屈を強引に突き進み、すべての人間を不幸にしていくのだけれど、結局すべての大元が肉欲っていうのがまた下品で最高。レクターほどの高尚さもジョン・ドゥほどの狂気も無く、ただただ己の欲望を正当化していくその様はある意味彼らよりよっぽどリアルかつ人間らしいとも言えますが。宗教的な色合いで荘厳な雰囲気も濃く、そういう意味では高尚な映画のような感じもするけれど、暴力描写も何気に気合が入っていて結構グロいのも中々のB級感覚。なので予告篇なんかの立派な人間ドラマを期待すると肩透かし必死。というか宗教的なファクターに関してはかなり浅いというか、あまり掘り下げてない印象でした(雰囲気つくりの装置的な意味合いに止まった感じです)。一応年代記っぽい構成になっていて、リズという女性の生き様を描くようになってはいるのですが、それを見せるにはちょっとこの監督では力量不足(いやダコタ・ファニングは頑張っているけれど、壮絶な生き様を感じさせる深みが足りないかと)。荘厳な雰囲気でごまかしているけれど、そこここでのツッコミ不足は否めないので、正直全体的にダレた感じでした。まあガイ・ピアーズの頑張りは素晴らしいけれど、やはりもっと怪物感というかカリスマが欲しかったのは正直なところ。それを含めて全体として非常に勿体無い映画でした。

★★

 

「ジオストーム」

ツッコミどころ満載のスチャラカバカパニック映画。もうそれ以上でもそれ以下でもないので正直書くことなんて何にもないです。という訳にもいかないのですが、いや本当ここまですっからかんな映画も久しぶり(アルマゲドン以来?)で、観た後に一切何も思わないのも久々の感覚である意味新鮮でもありました。でもこの手の映画の場合それが正解なので、決してけなしている訳ではない事だけはご理解を。ブラジルに超寒波が押し寄せる映像に笑い、銀座が崩壊する様に笑い、香港がホットプレート大爆発するのに笑い、ドバイが大洪水に呑み込まれるのを笑う。超大規模なテロなのにその首謀者が小物で動機もセコ過ぎに笑い、宇宙空間での大爆発の中、何事もなかったかのように静観する主人公の超人ぶり(というかレオニダス博士って…)に笑う。いや楽し過ぎでしょう。それ以上をこの映画に求める理由もないし、求める事自体が間違っているのです。いろんな映画でのいいとこ(だけでもないのがまたちょっと可愛い)だけを並べたパニック映画の名を借りたCG会社のプレゼンテーション。という訳でそういう意味ではこの手の映画の中では最高峰の映画です。だからと言ってそれが面白いかどうかというのは全くの別問題ですが笑

★★

 

「ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!

設定やあらすじは最高に燃えるのに、あまりに勿体無い残念映画。「海中とアクションは相性が悪い」ことを再発見したタルタル映画。以上。

★★

 

「劇場版マジンガーZ /INFINITY」

現時点でのダントツワースト1…てまだ1月ですが、たぶんこれ以上ひどい映画は今年現れないであろうというくらい、あまりにもダメすぎな映画(とは呼びたくないくらいひどい)でした。光子力研究所の仲間たちと力を合わせ、さらにスーパーロボット・マジンガーZを操り、人類を滅亡の危機に陥れようとした悪の科学者Dr.ヘルと彼の率いる地下帝国を壊滅させた兜甲児。それから10年の月日が流れ、世界は平和を取り戻し、彼は祖父や父と同じ科学者の道を歩んでいた。ある日、兜は富士山の地中で巨大な構造物と未知の生命反応に遭遇。それを機に人類は新たな脅威にさらされ、兜は再び人類を守ろうとマジンガーZを操縦して過酷な戦いに身を投じることになる…(Yahoo映画より)そもそもマジンガーZ自体が空想科学というかふた昔前のお話であって、しかも昔懐かしいスーパーロボット大暴れのある意味正統時代劇に通じる王道コテコテの勧善懲悪(原作はそうでもないけれど、まあアニメはそうでした)が魅力の全てなはず。そこにリアリティやら高尚な科学考証やらを求める意味がないにも関わらず、まあ妙な理屈やらをこねくり回すこねくり回す。しかもそれが全て的外れというか古臭いというかものすごく中途半端。しかも登場人物に妙な生活感を持たせるという意味不明な設定。マジンガーZにヒロインの妊娠・出産を盛り込んだり、あの兜甲児の人生をここまでリアル(というか生活感漂う中年)に描いたりするそのセンスがあまりに理解不能。極めつけはよくわからない萌え系ヒロイン。もはやこれに至っては出て来るたびにこっちが恥ずかしくなるくらい稚拙というか幼稚というかあまりに安直。いっそ機械獣VSマジンガーのバトル(ここだけは永井豪先生のデザインセンスの素晴らしさを再発見できて楽しい)だけで100分作ればそれなりに楽しめたのに、あまりに無駄かつ余計なものが多過ぎて、それがしかも全く的はずれという如何しようも無いものになってしまいました。いろんな年代の観客に媚を売り過ぎていろんなものを埋め込んだけど、それがことごとく裏目に出るというか「これやっときゃいいんでしょ」的なバカにしてる感がもう映画全体から滲み出てどうしようもなく不快で(これだけ言えば去年の「ゴジラ」の方がやりたい事がはっきりしてた分だけはるかにマシ)、兎にも角にもここまで観客をバカにした映画は久しぶりでした。

 

「ジュピターズ・ムーン」

予告編が妙に気になったので、結構楽しみにしていた本作。予告編を観た時、「ただ空中に浮く」という事がこれほど魅惑的な絵になるのかという驚きがあり、ハンガリー・ドイツ合作で題名からしても社会派なのはわかっていたけれど、そこのところは置いておいて、とりあえず本編もそういう映像の気持ち良さ的なところを期待していたのですが…なんとも微妙というか不思議な映画でした。これ、完全に寓話というかファンタジーなのでSF的な裏の設定とかそういう科学的な理屈は一切なし。というか主眼はそこでは無く、奇跡を目のあたりにした人間たちの反応を元にそれぞれのドラマを描き出し、かつ現代のヨーロッパが内包する諸問題を明らかにする事。なのでここでは聖人(というのはどうかという気もするけれどそれ以外呼びようが無いので)よりもその周りのキャラクターが非常に大事な訳で、この映画の場合、そこがどうもうまく無いというか微妙な感じ。利己的で拝金主義な医者が裏主人公なのだけれど、この人物がどうも愛嬌がないというか不快にしか思えないのは作劇的には上手くないかと。物語が進むにしたがて感情移入できるように作って行くのがこういう映画の定石だと思うのだけれど、結局最後までこの人物に好感をもてませんでした。それがまあこの映画の全て。「宙に浮かぶ」という事の意味がキリスト教的世界では様々な意味を持つらしく、”聖なるもの”としてのマストアイテムだったりするらしいのですが、我々無宗教派にはそこのところの感動が薄いのもちょっと微妙。これはまあ文化の違いなので一概になんとも言えないのだけれど、素晴らしい映画はそういうところも超越している訳で、そういう意味でも今ひとつな印象を受けてしまいました。これはもう演出力というか、目線の問題で、そういう現代ヨーロッパという世界の中でのマイノリティの問題を世界規模というか人類共通の問題として、全ての人々の心の響いてこその”映画”だと思うので、やはりもう一皮向けて欲しいというのが正直な印象的でした。とは言えやはり空中浮遊とか重力を無視した映像的魅力は圧巻なので、それを見るだけでも価値がある映画見にだとは思います。

★★★

 

「ダークタワー」

文庫にして合計17冊、あのスティーブン・キングの30年に渡る長大かつ壮大なライフワークがついに映画化!…って本当かなり前からその噂が上がっては立ち消え上がっては立ち消えしていたこの企画。ベン・アフレックやらロン・ハワードやらもう色々な人が関わっては離れて行くを繰り返し、その度に実現不可能かと思われていたこの企画がまさかこんなに簡単に製作・公開されることになろうとは…「IT」様様ですねえ。で。肝心の本編。いやーあの重厚で壮大で超大スケールのクッソ長い原作がこんなにあさーくかるーくうすーい映画になるなんて、ある意味キング映画の真骨頂っていう感じでした。基本キングってあらすじだけをとってみれば至極ありきたりというかよくあるお話で、取り立ててオリジナリティがある訳ではないけれど、病的なまでのディティールの積み重ねによる半端ない世界観の作り込みでの没入間と圧倒的にリアルな人間描写とキャラ造形、それと首根っこを力任せに掴まれるような強引な力業が持ち味。だからこそ世界中で売れまくる作家さんな訳なんだけれど、キング映画の失敗作の典型としてはそのあらすじだけをただ単に映像化しましたっていう時。まあキングのテクニックに演出が追いついてないとか、プロデューサー陣がそこの所の深みに気づいてない(気づいていてもあえて無視してる)のが一番の原因だけれど、昨今の傑作キング映画の連発を見ていると、キング・ユニバースの集大成とも言える需要な作品の映画化にまさkあの失敗はないだろうと思っていたのですが…まさにそういう失敗作の見本のようなお気楽超薄味映画となってしまいました。原作17巻(邦訳文庫版)を1時間30分強にまとめた時点で超薄味なことは覚悟していたけれど、ここまで軽いとは正直予想外。というかこれはもうイドリス・エルバとマシュー・マコノヒーの二人の気合いが抜けまくったお気楽演技を妙に軽いストーリーとスケールで楽しむ、いわゆるポップコーンムービー。お気楽とは言いつつもイドリス・エルバ(いやーイドリス・エルバ祭りでしたねえ。老ゴールデン・レトリバーみたい)のガンアクションとマコノヒーの楽しみまくりの変態チックな悪役ぶりは結構楽しいので、キング云々を考えなければそれなりに楽しめるアクション・ファンタジーとなっております。あまりに軽すぎる(ある意味80年代っぽいすねえ)そのストーリーについていければそれなりに楽しいザ・B級映画です。でもやっぱり原作全17巻を読み切った人間としては、きっちり描いた重厚なサーガで観たかったのが正直な気持ちです…

★★★

 

「ザ・リング/リバース」

まあ貞子がお笑い芸人に成り下がってしまいましたからねえ…いくらアメリカリメイクとは言え、ある意味可哀想な映画。以上。

 

「デトロイト」

1967年アメリカデトロイトで起こった暴動を描いた実録パニックサスペンス。さすがの”漢”キャスリーン・ビグロー、今回も気合い入りまくりの強烈な力技演出全開。その熱気というかエネルギーで引き起こされる極限状態は鑑賞後筋トレをしたような肉体的・精神的疲れを引き起こします。映画はデトロイト暴動を再現しつつ、2日目に起こったモーテルでの発砲事件を中心に描かれます。いやそのモーテル事件の40分間の恐怖ときたら…理不尽すぎる白人警官の言葉と物理的な暴力の圧倒的な恐怖。これはもうそんじょそこらのホラーなんかより遥かに怖い。言葉が通じているのにコミュニケーションが全く取れない理不尽さがこれほど強烈な恐怖を引き起こすとは、ある意味「悪魔のいけにえ」以来の衝撃。この40分間だけでもこの映画を観る価値があります。特に白人警官のリーダー役ウィル・ポーターが最高。典型的な白人トラッシュな憎々しい若者顔がまさにはまり役で、鬼畜としか言いようが無い極悪人だけれど立場を変えれば共感できる(かもしれない)複雑なキャラを圧倒的なリアリティで熱演。個人的にはアカデミー助演賞をあげたいほどの名演でした。彼だけではなく主要登場人物も含めて役者陣全員が一世一代の名演を披露。善人から小悪党、チャラ男からクソ真面目な警備員まで、この映画の圧倒的なリアリティを作る大きな要因となっております。そんな人物を適材適所に配置したシナリオもお見事で、ドキュメントとしての疑似体験度は最高峰レベルの映画となっております。とは言えだからこその長蛇で無駄が多い構成もまた事実で、前半のキャラクター紹介時間と後半の事件の影響時間ははっきり言って退屈(主人公格の黒人さんにもう少し魅力と共感があれば良かったのだが、チンピラぶりがどうにも鼻につくのは自分の頭が硬いからかもですが、まあ実話だからしょうがないのかも)。この二つをもう少し上手くテキパキとまとめればもう少し締まった映画になったのではと少し残念。とは言えここまで圧倒的なリアリティとエネルギーを持った映画はそうは無いので、その恐怖を味わうだけでも価値ある映画です。

★★★

 

 

ここでお得な映画番組情報‼︎台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする毎回1本の映画について僕の友人である40代男達が語るポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく時に毒々しくだけど基本は面白おかしく語っておりますので、是非聞いてやってくださいませ。

よろしくお願いします‼︎