大阪で生活保護を支援するWing堂ヶ芝行政書士事務所です。

 

医療費保障の特約などが付いた生命保険を契約されている方は多いかと思いますがこのような方が生活保護を利用するにあたって、生命保険を解約する必要はあるのでしょうか?

 

生活保護の利用にあたって、原則として生命保険契約の保有は認められていません。しかし、貯蓄的性格をもたない危険対策を目的とする保険で、解約返戻金、保険料が一定以下であれば、保有することが認められています。

 

生活保護の申請時に生命保険を契約している場合、その生命保険に解約返戻金が出るのであれば、原則として、解約して解約返戻金を生活費等に支出した後でなければ生活保護の利用を認めない扱いとされています。

ただし、解約返礼金が少額であり、かつ、保険料額がその地域の一般世帯との均衡を失しない場合に限り、生活保護利用開始後に保険金または解約返戻金を受領した時点で生活保護法63条により変換することを条件に、生活保護の利用を開始してもよいとされています。

 

ここでいう「解約返戻金が少額」であるかどうかの判断は、医療扶助を除く最低生活費のおおむね3ヶ月程度以下が目安とされています。

これは、保険は「万一の場合に備える」という保障的性格に意味があり、日常の生活費の不足を補うために保険を中途で解約することはむしろ例外とされており、保険解約返戻金は「資産」とはいっても、払い戻しを当然に予定している預貯金とはかなり性格を異にしているので、少額の解約返戻金まで活用を求めるのは社会通念上適当ではないと考えられること、また解約はかえって保護廃止後の世帯の自立更生に支障を生じるおそれがあること、が根拠となっています。

したがって、危険対策を目的としない貯蓄的性格が強い養老保険当の保有は認められません。

生活保護申請時には、解約返戻金や保険料の金額にかかわらず、全ての生命保険を解約するように指導されることが多いようですが、前記のとおり危険対策を目的とする保険で、解約返戻金やj保険料の金額が一定金額以下であれば、保有が認められるとされているので簡単にあきらめる必要はありません。

 

生活保護申請時に生命保険契約の維持が認められたとしても、生活保護利用開始後に保険金又は解約返戻金が支払われた場合においては、生活保護申請時の解約返戻金に相当する金額は、生活保護法63条に基づく返還の対象となりますので、変換する必要があります。

入院等により発生した保険金も同様に収入認定の対象となります。

「保険金、その他の臨時収入」については、受領のための必要経費を除き、8000円を超える額が収入として認定されます。

しかし、臨時的に受ける保険金のうち「当該世帯の自立更生のためにあてられる額」については、収入認定の除外対象とされ、保護費の減額はされませんので「自立更生計画」を立てて交渉することが必要です。

 

なお、解約返戻金が設定されていない生命保険については、前記と異なり「資産」性が問題となる余地はありませんので、保険料が生活保護費から支払うことのできる妥当な金額であれば、生活保護申請時に解約しなければならないことにはなりません。

 

生活保護利用中の保険契約に関して、生活保護利用中であっても、生活保護費をやりくりして、生命保険を契約することは可能です。その場合の保険料は、生活保護申請前から生命保険を契約していた場合と同様に、医療扶助を除く最低生活費の1割程度が目安となります。

 

別世帯の者が契約者となっている生命保険に関しては、生活保護の利用を考えている世帯の者を被保険者として、別世帯の者が生命保険を契約している場合、これについて解約するように指導されることがありますが、当該生命保険は、別世帯の者の財産ですから、生活保護の利用開始にあたって、解約する必要はありません。

その生命保険契約に基づいて、入院給付金や死亡保険金などが支払われた場合、別世帯のものがそれら保険金の受取人であれば、生活保護の利用において、収入認定や生活保護の返還の対象となることはありません。

一方、生活保護利用世帯の者がその保険金の受取人になっている場合には、支払われる入院給付金や死亡保険金は収入認定の対象となります。

また、支払われる保険金の金額により、「一時的に保護を必要としなくなった場合であって、以後において見込まれるその世帯の最低生活費及び収入の状況から判断して、おおむね6ヶ月以内に再び保護を要する状態になることが予想されるときには生活保護費の支給が停止され、「当該世帯における収入の臨時的な増加、最低生活費の臨時的な減少等により、以後おおむね6ヶ月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められるとき」には生活保護が廃止されます。