全国対応で生活保護の申請支援などを行っている行政書士の吉本です。

 

本日は生活保護の中でも特に関心の高い扶養照会についてこれをどのような場合であれば拒むことができるのか、ということについて解説していきたいと思います。

 

当事務所に頂くご質問の中で多いのは不仲な家族がおり、扶養照会をされたくないというような場合です。

 

生活保護法4条2項は「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と定めており、扶養義務者から扶養(仕送り等)が現実に行われた場合には、保護費に優先して利用者の生活費等に充当されることになります。

 

そこで、保護の実施機関は、申請者が扶養を受けることが出来ないのかを確認するために、扶養義務者に関する調査(扶養調査)を行うことになりますが、「扶養義務履行が期待できない」扶養義務者に対する扶養照会はしなくてよいことになっています。厚生労働省は、2021年2月26日、同年3月30日、相次いで保護課長通知を発し、扶養照会に関する運用を改善しました。

 

扶養調査は以下の流れで行われます。

 

①扶養義務者の存否の確認

まず、要保護者からの申告や、また、必要に応じて要保護者の戸籍謄本等を確認することにより、要保護者の民法上の親族関係者の中から、扶養義務者に該当する者の現存を確認します。

②扶養義務者の扶養能力の確認

存在が確認された扶養義務者について、再び、要保護者から聴取する等の方法により、当該扶養義務者の職業や収入等を確認し、当該扶養義務者による「扶養の可能性」について調査します。

③扶養調査(扶養照会を含む)

 

②の結果、「扶養義務履行が期待できない者」と判断された場合は、扶養照会は行う必要がありません。

「扶養義務履行が期待できる」と判断された扶養義務者のうち、

1.夫婦の一方や未成熟の子の親など生活保持義務関係にある者

2.これ以外の親子関係にある者で扶養の可能性が期待される者

3.過去に要保護者から扶養を受ける等特別の事情があり扶養能力があると推測される者

については、「重点的扶養能力調査対象者」として取り扱うことになります。

この場合、当該扶養義務者が「実施機関の管内に居住する場合」には、実地に調査を行い、「実施機関の管外に居住する場合」には、回答期限を付して文書照会を行うこととされています。

「扶養義務履行が期待できる」扶養義務者のうち、「重点的扶養能力調査対象者以外の者」については、文書または電話による扶養照会を行うこととされています。

 

扶養照会が不要とされる「扶養義務履行が期待できない者」とはどのような者なのでしょうか。

この点、厚生労働省は以下のような具体例を示しています。

①当該扶養義務者が被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦、主夫等)、未成年者、おおむね70歳以上の高齢者など

②要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養できない者(例えば、当該扶養義務者に借金を重ねている、当該扶養義務者と相続をめぐり対立している等の事情がある、縁が切られているなどの著しい関係不良の場合等。なお、当該扶養義務者と一定期間(例えば10年程度)音信不通であるなど交流が断絶していると判断される場合は、著しい関係不良とみなしてよい)

③当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者等(夫の暴力から逃れてきた母子、虐待等の経緯がある者等)

 ①は扶養義務者側の生活状況(収入や資産の状況)から、②は要保護者と扶養義務者との関係性から「扶養義務履行が期待できない」と判断される類型といえ、③は扶養照会をすることでトラブルや被害が想定される類型といえます。

特に、③の場合は、「扶養の可能性が期待できないものとして取り扱うこと」とされ、扶養照会の禁止が明確にされています。

 厚生労働省が示した上記の3類型は「あくまで例示であり」、直接当てはまらなくても、「扶養義務履行が期待できない」と判断されればよいのです。

厚生労働省も、「これらの例示と同等のものと判断できる場合」は同様の取り扱いをしてよいことは当然とし、特に「②の累計への該当にかかる判断」については、柔軟に判断するための指針を示しています。

したがって、交流が完全に断絶していなくても、親族間の関係性や当該扶養義務者の生活状況から扶養義務履行が期待できないと判断されるのであれば扶養照会をする必要はありません。つまり、不仲な場合でも扶養照会は拒否できます。

 

 扶養の可能性調査において、「要保護者が扶養照会を拒んでいる場合等においては、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会の対象となる扶養義務者が「扶養義務が期待できない者」に該当するか否かという観点から検討を行うべき」とされています。

「扶養照会に関する申出書」の書式を利用し、扶養義務者ごとに「扶養義務履行が期待できない」具体的事情をあらかじめ記載したうえで生活保護申請時に提出することで、通常は不要な扶養照会を阻止することができます。

しかしそもそも、民法上の扶養義務は、扶養義務者が負うものであり、要不要者がもつ一「扶養請求権」は、要扶養者が特定の関係にある扶養義務者に扶養の請求をしたときにはじめて発生することからしても、扶養を求めるかどうかは本来的に要不要者の自由です。したがって、扶養照会は、「申請者が事前に扶養請求の意思を表明し、かつ、明らかに扶養義務の履行が期待できる場合」に限り行う旨、早急に厚生労働省通知を改正することが求められているといえるでしょう。

 

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