いつか来る日

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9月からお弁当を持参している娘。
この日の為、私は日本からカーライルでは絶対買えないスヌーピーの弁当箱と袋を3個づつ買って帰った。
お弁当は毎日、和洋折衷、色んな具を入れ色合いを考え作っている。
娘から「明日は卵サンドをお願い」と言われればソレを作るし、言われなければ日本風のを持たせていた。

ここ2週間ほど、娘がお弁当を半分残して帰って来るようになった。
理由は「時間がない」であった。
娘の学校は弁当を食べる場所が講堂なのであるが、規模が小さいために入れ替え制となる。
そのため、前の組が遅ければ講堂に入るのに列を作って待たねばならない。
そのため、私も疑う事無く娘の言う事が本当だと思っていた。

そんな木曜日の事。
お弁当箱を洗おうと弁当箱を開けてみると、ほとんど食べていない。
私は娘につい怒ってしまった。
「こんなに食べへんねやったら、作る意味ないわ!もう明日から自分で作り!」と言ってしまった。

すると娘が火が付いたように号泣し始めた。
いつもとは違う泣き方に私は戸惑い、何かあったのだと確信した。
娘を膝の上に乗せ、まず怒った事を詫びた。
すると娘は「お母さんのせいじゃない・・」と連呼する。
やはり何かあったはず・・。

理由を問いただすと、クラスメイトからこの1か月間、ずっと「あんたの弁当、変や」「美味しくなさそう」「何で弁当にチキンナゲットなんか入ってんの?」「何で弁当にウインナーなんか入ってんの?」「またカップに入った変なモン(カップで作ったキッシュ)入ってる」などと言われ続けているという。
それで食べられなくなってしまい、遂に木曜日のようにほとんどを残す結果になったと言った。

私は娘にからかった子の名前を聞き出した。
はらわたが煮えくり返るほど腹が立ち、吐き気がするほど悲しかった。
こんな日が来るかもしれないと、娘を産んだときから分かっていた。
国際結婚している先輩ママから似たような話を聞いていたし、冷静に対処すれば良いだけの事だと頭では理解していても、娘の心の傷を思うと申し訳なく、しかし涙を見せるワケには行かなかった。

娘は私が悲しむと思い、ずっと胸に秘めていたと言った。
ちょっとでも日本を感じて欲しいと思い買ったランドセルや日本の弁当箱、それに日本風の手の込んだお弁当、これらは私が自己満足でやっていた事で、実は娘に大きなプレッシャーをかけていたのではないか、実は娘は嫌だったのではないか、そう思うと申し訳なくなり震えが止まらなかった。
こんな田舎の外国人も稀な地域で、それをすべきではなかったのではないか、私は自分を責めるばかりである。
「話してくれて有難う」私は娘に言った。
娘は「どうか明日からも変わらず日本風弁当を作ってほしい。こんな事があったからって、あの子達みたいに毎日サンドイッチばっかり持っていきたくない。ただ、これ以上あの子達に批判されたくない」娘はそう言った。

もっと早くに気づいてやれば良かった。
悔やし涙が溢れてしまう。
娘に「お父さんとお母さんに任せて」と言い、私は帰宅した夫に話した。

夫は「国際結婚してここに住み、子供が生まれた時からいつかは起こる出来事やと想定内やったけどな」と言い、こんな話を聞かせてくれた。
前に勤めていた学校で、こんな事があった。
給食時に、食事をオーダーするカウンターで女子生徒がジャケットポテト(日本人にはベイクドポテトと言う方が馴染みがあるだろうか。大きなジャガイモを丸ごとオーブンで焼きあげ、中に具を入れて食べる)を配膳係のおばちゃんに頼んだ。中身の具には、ツナマヨネーズとチーズを頼んだ。
すると配膳のおばちゃんが「えー?ツナマヨとチーズ入れんの?聞いた事ないわ、そんな組み合わせ。そんなん頼んだ子、今までいてへんで!」と言ったと言う。

その子は以来、その自分の大好きなジャケットポテトを頼むとき、おばちゃんに再び言われるのが嫌でチーズだけしか頼めなくなってしまったと言う。
しかし、それを誰にも言わずに半年が過ぎた頃、女子生徒が母親に言った事で発覚した。

おばちゃんは「母心で言った」と弁明。
しかし、学校側は厳重注意し、おばちゃんをキッチンに回し、今後は生徒に一切の何もを言わない事を約束させたという。
夫は「大人でも子供を傷付けてしまう事がある。だから今回の事も子供ゆえに珍しさがそうさせたと思うけど、これはきっちり学校側に言わなあかん」とし、夫が翌日の朝、娘の学校校長に話しをしに行った。

校長はショックを受けている様子であった。
「今日のランチタイムまでに子供達には、友達のお弁当を批判しては行けない事、ここにはイングランド出身者だけではなく、様々なバックグラウンドを持った家族が住み、この学校に通っている事、だからこそお弁当の中身があなた達の馴染みある内容ばかりではない事、あなた達が普段食べている食事内容が全ての食事では無い事、国によって様々な食べ方があるという事を話します。もう今後は二度とこんな事が起こらないよう約束します」と校長が言ったという。

また、夫から「僕で良ければ空いている日に、日本文化を紹介する臨時授業をします。そうする事で、そこにさりげなく日本食を紹介し、例えば海苔や寿司が日本人にとって昔から食べられている食べ物であり、それに代わるものはイングランドなら何なのか、またそれを他国の人から否定されたらどんな気持ちになるかなどを話す機会を設けてみてはどうでしょうか?」と提案したところ、校長から「是非、近日中にお願いします」と言う事で話が決まった。

知らないから非難する。
だから知ってもらえば変わるかもしれない。
地道に溶け込んでいくしかないのだろう。
今日からまた頑張るのである。
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