宮部みゆきさん。
義母が大好きで、いろいろ持っているので
夫の実家から借りていたものを、年末に読み終わりました。
(ですが、新年1つめにしては重すぎるかなぁと、
2つめの記事にしました。笑)
文庫なのにお高めなのは、かなりの長編だからです。
火車の、今日は我が門を、遣り過ぎて、
哀れ何処(いずち)へ、巡りゆくらむ
タイトルと表紙はこの歌から来ているようです。
その運命の車に乗ってしまったら、転げ落ちるしかない
……のか?
主人公は、怪我のため休職中の刑事。
婚約者が消えたから探してほしい、と親戚から頼まれ、調査をすることに。
その親戚によると、結婚にあたりクレジットカードを作ってもらおうとしたことから彼女の過去の自己破産歴を知り、
そのことについて尋ねた翌日に婚約者は消えた、と。
婚約者の過去を追っているうちに
彼女は「短期間で、まるで別人のように」変わったことがわかる。
……いや、そうではない。
「まったく別人に」変わっていたらしいーーー
お金と運命に振り回された二人の女性の物語です。
クレジットカードが広まったばかりで、グレーゾーン金利が当たり前の頃の時代設定だったり
現在とは違う点が多いですが
同じところもいろいろあります。
職業柄、破産については詳しいほうですが
破産される方が、皆浪費癖があるとか、人間的に欠陥があるとはまったく思いません。
ちょっと気前の良いタイプや、ちょっと見栄を張りがちなタイプで、でも普通に暮らしていけていたのに
何かがきっかけで、転がり落ちてしまったのだろうな、というパターンはとても多いです。
このコロナ騒動がきっかけでーーとなりかねない方に伝えたい。
自殺したり、犯罪を犯したり
そんなことをする前に
自己破産という手続があることを知ってほしいです。
※小説内の、弁護士の言葉でもあります。
破産しても、それを知られるのは債権者(借りていた会社)や金融機関だけです。
勤め先にも親族にも、自分から伝えなければ知られることはほとんどありません(ただ、勤め先や親族からも借りていたら別ですが)。
持ち家なら売却して換価されるため、引っ越しは必要でしょうが、賃貸ならそのまま住み続けることもできます。
(滞納している場合はケースによりですが、、もっと安い部屋に引っ越したほうが後々のやりくりには良いかもですし)
破産したら、その時点での財産は洗い出されて
ローンの残った車は手放すことになったり、高額な返戻金のある保険は解約しなければならなかったりもしますが、
家財の一切を取られる訳ではなく、預貯金も生活に必要な一部は残せますし
何より破産手続終了後になら、いくらお金を貯めても、もう自分のものとして使うことができます。
だから、一旦リセットするなら早いほうが良いのです。
40代でリセットして、家は失って子どもは私立を辞めさせ公立に転校……となったとしても、子どもが独り立ちしたら老後資金を貯められますし、穏やかな老後を迎えられるかもしれません。
借金を膨らませながらなんとか60を超え、退職金では払いきれずその時点で破産を考えたとしたら、それからは本当に少ない、年金の範囲内でできる程度の生活しか送れません。
いわゆる街金、ヤミ金にまで手を出してしまうと、
破産手続をしたとしても相手が法を守ってくれるかわからないので
そこまで堕ちる前に、専門機関に相談されることをお勧めします。
小説の話に戻りますが
すっきり解決!系のラストではないです。
なので、私はもやもやした気持ちをしばらく引きずってしまって、
こんなブログを書いています。笑
でも、古い小説なのに、
今の時代でも読み次がれるってすごい。
ゆっくり時間があって一気読みできるときに
お勧めです!