距離を問わず、陸上のトラック種目において「腕振り」とは非常に重要な技術であることは語るに及ばない。しかし、腕振りの本質が腕を振ることではないのに気付けた人はどれほどであろうか。

僕の感覚では、腕振りとは「結果」である。前に進めるように上半身を使った結果として腕が振られるのである。この過程を無視して腕だけを振ろうとすると、肩甲骨を使えない腕振りになる。一方で、腕を振る意識が全く無い訳ではない。上半身の動きの結果として生まれた腕振りを斜め前への重心移動に活かすためだ。僕が行う二軸走法では片脚に全体重を乗せることが重要であるため、重心の左右への切り返しがまず必要だ。そして、せっかく前方向に腕が振れるのだからそれを使って重心を前方向に引っ張る。この2つの組み合わせが斜め前方向への重心移動になっているのである。

腕振りは走りのリズムを作るだけでなく、重心移動にも大きな役割を果たすことがお分かりいただけたと思う。逆に上半身を固定して腕だけ振ろうとするのはエネルギーの無駄と言っても良いだろう。このエネルギーロスを減らすことでスプリントの後半部分の失速を抑えることができるのではないかと考察している。脚が治ったらすぐに試す所存だ。