SWORDへのカウンターとしての本部襲撃、それこそが吾妻の作戦だった。SWORDの情報部隊の網に引っかかるようにあえて派手に八叉組を占拠した。そしてその周辺の街に配下の構成員や半グレ達を配置したのも全て、手薄となったSWORD本部へと侵入するためだった。
デモンズ構成員「さぁ!離れてくださいよ!!」
警備のいなくなったSWORD本部の入り口に爆弾が設置される。そして起爆した結果、本部のゲートに大きな穴が空いた。そこから吾妻を筆頭に続々とSWORD本部へと侵入していく。
戒亡「お、早速熱烈なお出迎えのようだな。」
吾妻派が侵入したと同時、本部全体にけたたましく非常事態を告げるアラートが鳴り響く。その音が起動の合図かのように、続々と戦闘用警備ロボットやSWORD隊員が駆けつけてくる。
千狛瑠「……フン。」
ロボット『侵入者確認、セキュリティレッドに基づき、即排除……』
警備ロボット達が一斉に吾妻達に襲いかかろうとしたその時、背後から一斉に警備ロボット達が襲われたのだ。何度も殴られ、銃弾まで浴びせられ、警備ロボット達はたちまち再起不能となってしまった。
雷汰「よし、お前らよくやったぞ。」
警備ロボット達を破壊したのは、なんと共に駆けつけたはずのSWORD隊員達だった。彼らは吾妻達を見ても警戒を見せず、ただ悪意のある笑みを向けている。
SWORD隊員「ようこそ、吾妻さん。」「小型中型の警備ロボットはこれで全部です。」
戒亡「へぇ……コイツら全部〔裏切り者〕か。」
なんと吾妻は既に、かなりの数のSWORD隊員を自分達側へと寝返らせていたのだ。そしてこの日のために、SWORDへ潜入させていたのだ。
千狛瑠「まさか手薄になった本部を守るために残しておいた隊員達に裏切られるなんて……SWORDってのは忠誠心が低いのね。」
雷汰「一部はこのまま俺達に加わって一緒に来い。あとのヤツらは仲間のフリして他のヤツらの所へ行って撹乱しろ。」
SWORD隊員「「了解です!!」」
作戦通り裏切り者の隊員達が他の隊員達の元へと向かおうとする。しかしその時、吾妻はあることに気がついた。
千狛瑠(……待って。全員私の息がかかっているけど、コイツらは全員隊もバラバラ。 なのに……この場に〔全員〕揃ってる……!?)
この場には吾妻派に寝返った隊員達が全員揃っていた、こんな偶然があるはずないと気がついたその時、背後から轟音が轟いた。
千狛瑠「!?」
雷汰「なんだぁ!?」
なんと壊したはずのゲートを覆うかのようなかたちで外壁が動き、完全に空いた穴を塞いだのだ。再び破壊しようとデモンズ構成員達が攻撃するも、今度はびくともしない。
デモンズ構成員「何だ!?この壁!?」「さっきと全然違ぇぞ!」
戒亡「面倒くせぇ……塞がった程度で何だ? こんなもんさっきみたいに爆弾で……」
SWORD隊員「ぐあぁぁぁ!!」
突如背後から叫び声が聞こえてきたと同時、裏切り者の隊員達が次々と壁へ叩きつけられていく。驚いて振り返ると同時、そこには予想だにしない人物が立っていた。
???「全てが貴様らの手の内だと思っていたのか?デモンズ。」
戒亡「おいおい……いきなり大物じゃねぇかよ……」
そこに立っていたのは、吾妻達へ向けて絶対零度の視線を放つSWORD最高戦力、皇城だった。
雷汰「皇城 蘭世……!」
千狛瑠「へぇ……出迎えにしては随分と乱暴ね。 疑いもなしに自分の部下を吹き飛ばすなんて。」
蘭世「ヤツらに弁解の余地はない。ヤツらが裏切っていると分かっていた、だからこそボロを出すお前らの前に配置した、それだけだ。」
SWORDは既に明智を中心とした情報部隊により、SWORDに潜む吾妻派の裏切り者達を調べ上げていた。そして確証を得るため、吾妻達が侵入してくるであろうゲート近くに配置したのだった。
千狛瑠「皇城 蘭世、いい冷徹さね。目を見るだけで分かるわ。 けど残念、見るのは今日で終わりだなんてね。」
最高戦力の皇城を前にしても、吾妻は不敵に笑い、臨戦態勢に入るだけだった。それは五十嵐も戒亡も同じだった。一触即発の緊張感が張り詰めるなか、吾妻が先に動く。
千狛瑠「〔テラースモッグ〕。」
蘭世「!」
フィアーテラーズから吐き出されたテラースモッグが周囲を包む。皇城は素早く口元を覆い、後退する。それでも吾妻達のいる方から視界は逸らさない。すると微かにテラースモッグが不自然な動きをしたのを皇城の目は捉え、すぐに通信用デバイスを取る。
蘭世「侵入した幹部達は散り散りに逃げた。すぐにその姿を追い、必ず仕留めろ。」