みなさんこんにちは!ファイナンス稲門会事務局です。
3月19日開催の第20回稲門アカデミーのレポートが、幹事の徳田様より届きましたので掲載します。

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今回の『稲門アカデミー(勉強会)』は、
東洋大学PPP研究センターのリサーチ・パートナーである藤木秀明氏をお招きし、話題の「公民連携-PPP-」についてお話いただきました。






藤木さんは、秦野市公共施設再配置計画検討委員会委員や、横浜市「共創フォーラム」公有資産利活用分科会メンバーなどを歴任されてきました。
今回の勉強会では、PPPの定義から、最新のPFI動向やそれらに関するファイナンスの役割まで、幅広く非常に内容の濃い講演をしてくださいました。
ここでは、お話いただいた内容の一部をご紹介したいと思います。


【講演内容】
1. PPPの基礎知識
2. インフラ老朽化問題とPPP
3. PPPにおける金融の役割



はじめに、今、なぜPPPが話題になっているのでしょうか。
例えば、公共施設や公共サービスの供給量が大きい「大きな公共」と、国や地方公共団体の役割や財政規模が大きい「大きな政府」の組合せでは、財政破綻が危惧されます。
一方、その反対の公共施設や公共サービスの供給量が小さい「小さな公共」と、国や地方公共団体の役割や財政規模が小さい「小さな政府」の組合せでは、国民の不満が発生します。
「大きな公共」と「小さな政府」の組合せは、これまで同時に実現することは不可能でした。この「大きな公共」と「小さな政府」をつなぐのがPPPです。
経済産業省「日本版PPP研究会」においても、「民間でできることは、できるだけ民間に委ねる」との原則のもとに、公共サービスの属性に応じて、民間委託、PFI、独立行政法人化、民営化等の方策の活用に関する検討を進めており、我が国における公共分野での官民パートナーシップによる公共サービスの民間開放(PPP)の推進を目指しています。


次に、実際、日本にはどのような例があるのでしょう。
今回の講演では、公共資産活用型事例として、ヤマト運輸コールセンターのお話がありました。
未利用施設である自治体の議場(新潟県南魚沼市)や、学校の廃校舎を活用して、ヤマト運輸コールセンターを誘致することにより、収入と雇用機会(数百名)の創出効果があったそうです。
仕組みを簡単に説明すると、自治体とヤマト運輸が定期賃貸借契約を結び、ヤマト運輸は自治体に対して賃料を支払います。
そしてヤマト運輸から利用者に対してはコールセンターサービスが提供される、という流れになっています。
このほかにも複合例として、奈良県養徳学舎建て替え整備事業などのお話もしてくださいました。
そして、PPPにおける官の決定権問題や民間提案の課題など解決すべき点などについても、その方向性を含めわかりやすく教えていただきました。
「PPPのトライアングル」として、政府、地域、市場の3つのセクターの関係を三角形で示した図は視覚的にもとてもわかりやすいので、ご興味のある方は一度見てみてください。


次に、インフラ老朽化に関してですが、トンネルの天井版崩落事故や橋のワイヤー破断事項など私たちが生活するうえで既に実感していることでもあるでしょう。
老朽化による更新投資の必要性は全国的で、公共施設、道路、橋梁、上水道、下水道管だけでも、今後50年間にわたって、なんと年間8兆円もの投資が必要とのことです。
これらの対応策としては、公共施設の利用者の範囲を3階層に分け、機能を維持しつつ負担は3割減になる「3階層マネジメント」などがあります。
例えば、奈良県養徳学舎(東京都文京区)は、使っていない公有地を民間デベロッパーに貸し出し、その収入で、公共施設を無償で建設するという公的不動産活用を行っています。
これは、「3階層マネジメント」の“3層”にあたる住区部分を「ソフト化」することにより公的不動産を活用した例です。
このほかにも多くの事例や、最新の動向など詳しく教えていただきました。


最後に、PPPにおける金融の役割については、地域の課題解決と金融機関経営を両立するビジネスモデルの必要性や、金融機関にとっての意味などを「PPPのトライアングル」で説明していただきました。


今後の展開としては、金融機関が地域の関係を意識した取引体制をとることで、地域の課題を解決する金融ソリューションの提供をより効果的に行えるようになるでしょう。
その結果、地域に必要な公共性のあるプロジェクトやサービスを、地域企業や市民が連携したソーシャル・ビジネスとして維持・拡大する選択肢が広がると考えられます。
金融手法についても、貸出にとどまらず、資本市場を活用した大規模なものから、地域金融機関やクラウドファンディング、市民金融など多様化な手法を活用することでその可能性はより広がるでしょう。


以上、ご講演いただいた内容の一部を紹介させていただきました。

今回私が一番感じたことは、PPPやPFIは今後の日本に必要不可欠で、民間においても非常に魅力的なビジネスに繋がる可能性があるということです。

また、講演の最後に行われた質疑応答では、多くの方がそれぞれの立場から非常に熱心に質問をされており、PPPやPFIへの関心の高さが伺えました。
財政健全化と経済活性化を両立する手段として注目が集まるPPP、PFIにはまだまだ課題があると思いますが、官民ともに理解を深め、民間がビジネスとして意欲的に取り組む事業環境を整えていくことができれば、これからますますPPPやPFIは活用されていくのではないでしょうか。





藤木さん、非常に充実した内容の講演をどうもありがとうございました!!
ファイナンス稲門会では今後も勉強会を開催していく予定です。
皆様、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。                    

徳田展子