【米国市況】安全資産買い、仏政治不安でリスク警戒-ドル157円台前半(24年6月15日 ブルームバーグ日本語電子版無料版)
記事(Rita Nazareth)
(1)要点
- S&P500種が小幅安-債券や金、ドルに逃避買い
- NY原油先物は下落、週間では4月以来の大幅上昇-金反発
(2)「株安、債券や金、ドルといった安全資産に買い」
14日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小幅安。
フランスの政治危機への懸念が深まるにつれ、世界的に不安な心理が再燃し、売りが優勢になった。
一方、債券や金、ドルといった安全資産に逃避買いが入った。
(3)「欧州は政府債務の急増や予算の肥大化が懸念される」(ミラー・タバクのマット・メイリー氏)
「欧州の状況は少し危うくなり始めている。この状況が新たなソブリン債危機に発展するには程遠いが、政府債務の急増や予算の肥大化が懸念される中、欧州(特にフランス)の動向は市場に懸念をもたらしている」と述べた。
(4)「物価横ばいは歓迎すべきだが、インフレリスクは依然として上方向」
6月の米ミシガン大学消費者マインド指数(速報値)は予想外に7カ月ぶりの水準に沈んだ。物価の高止まりが家計に対する見方を圧迫する構図が続いている。
クリーブランド連銀のメスター総裁は、最新の物価統計が歓迎すべきものであったにもかかわらず、インフレリスクは依然として上方向に傾いているとの見方を示した。
リンク クリーブランド連銀総裁、インフレへのリスク「まだ上向き」 (1)
(5)
1)S&P500種
資本財・サービス株を中心に売りが優勢となった。
ハイテク株は堅調。通期利益見通し上方修正のアドビは15%上昇した。
2)米国債相場
上昇。ドイツ債の上昇につれる格好となった。フランス債とドイツ債のスプレッドは週間ベースで過去最大となる29ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大した。
リンク【欧州市況】仏独債利回り差、週間で過去最大の拡大-株は軒並み下落
(BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン、ベイル・ハートマン両氏)
「フランス経済と欧州連合(EU)の関連性、そして英国のEU離脱という過去の記憶がよみがえることを考えると、質への逃避は当然だ」
「フランスもEU離脱した場合、EUの長期的な見通しを再検討する必要がある」と述べた。
3)外国為替市場
ドルが上昇。週間ベースでも4週連続で上げた。フランス議会選挙を控えて欧州資産が軟調となり、安全通貨に買いが入った。
ユーロは対ドルで最安値 一時1.0668ドルと、5月1日以来の安値水準を付けた。
円
ニューヨークの取引時間帯に対ドルでの円相場は、1ドル=157円台前半で小動きとなった。アジア時間には日本銀行の政策発表後に158円26銭まで下げていた。
4)原油
ニューヨーク原油先物相場は下落。週間では4月以来の大幅上昇となった。
今週発表された航空データでは、航空便の運行状況は新型コロナウイルス流行前の水準に戻った。
5)金「極右政党が再び勝利することで債務危機が発生しかねないとの懸念から金に買い」
スポット価格は反発。週間では4週ぶりに上昇した。米金融当局が近く利下げを開始するとの見方に加え、フランスで政治危機が深まっていることが支援した。
(サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏)
「フランスの極右政党が再び勝利することで債務危機が発生しかねないとの懸念が強まっており、金への逃避買いが膨らむ可能性がある」と指摘。
金は逃避先としての需要に加え、中央銀行や中国消費者による買いで、今年に入って約13%上昇。
原題:Traders Shun Risk as French Turmoil Rattles Globe: Markets Wrap(抜粋)