内定率、最高の85% 就活ルール形骸化 6月民間調査(24年6月8日 日本経済新聞電子版)

 

記事

 

(1)要点

就職情報会社のキャリタス(旧ディスコ、東京・文京)は7日、2025年春卒業予定の大学生・大学院生の内定率が6月1日時点で過去最高の85.2%だったと発表した。同日を面接解禁日とする政府の就職活動ルールは形骸化し、企業は希少な若手人材を確保しようと配属先の確約などで青田買いに走っている。

調査は1~6日にインターネットを通じて実施し、1160人から回答を得た。1日時点の内定率は前年同期から3.9ポイント上昇し、現行ルールになった17年卒以降で過去最高となった。

 

 

(2)内定を得て就活を終えたが就職先を決めていない学生は7.8%、内定はあるが就活を続けている学生は21.0%いた。一部の学生はより条件のいい企業を吟味する終盤戦に入っている。

 

(3)「入社前に配属先を確約する職種別採用の対象を広げる」

少子化や人手不足を背景に「売り手市場」の傾向が強まるなか、採用段階から配属先を確約する取り組みが広がる。

KDDI

 新卒社員の担当業務を入社前に確約する職種別採用の対象を、IT(情報技術)エンジニアや法人営業など14に広げた。日清製粉グループも25年卒入社から学生の希望する事業・職種への配属を確約する。

三井住友銀行

 25年卒入行の採用から新たに為替や債券の取引などを手掛ける部署の初期配属を確約する枠を新設した。配属後は短期の異動は実施しない方針だ。

東京海上日動火災保険

 転勤を避けたいと考える学生を取り込もうとしている。26年度には本人の同意がない転居を伴う転勤を撤廃する方針を掲げる一方、勤務地限定の「エリア総合職」の採用を増やしている。

 

(4)

先行きが見通せない経済状況の中、将来の転職も見据えて能力を高めたいと考える学生も多い。

 

1)学研ホールディングス(HD)

 全社員対象に、職種や業種を問わず求められる「ポータブルスキル」や生成AI(人工知能)といったデジタルリテラシーを学ぶ研修を始めた。外販している研修などをもとに構成し、グループワークを多く取り入れた。

 

2)三菱商事

 23年から業務時間内に他部署の業務を経験できる「社内複業制度」を導入している。国内で働く入社3年目以上の社員を対象に、業務時間の最大15%を所属部署以外の業務経験に充てることができる。