a little happy
地元のコーヒー&ベーカリーに入った時の事。
店内席のガラス越しにオープンデッキ席を見ると、何やら学生位の女の子が
ラッピングされた小箱を前に、リボンと格闘していた。
自分で包んだのか、淡い緑色の包装紙にキレイにくるまれた箱は、
あと一息というところで惜しくも仕上がりきれていなかった。
すると、
一つあいだを空けて座り、タバコを燻らせながらその様子を伺っていた年配の女性が、
その女の子に声を掛けた。
コチラからは二人のやり取りはきこえないけれど、
どうやら
ちょっと貸してごらん・・・
と言っているらしい。
二人の様子を伺うに、
贈る相手はどんな人? 仕上がりはどんなカタチ? どんなモノを包んでるの?
などの女性の質問に、女の子は丁寧に答えている。
ソレによってどんなリボンの掛け方が最適なのかを話し合っているようだ。
そして女性がオモムロにリボンを手に取り、箱を引き寄せると、
素早く (…かどうかは背中越しには判らなかったが…) 手を動かした。
次に女性が箱を女の子に差し出した時には、
白銀色の細身で上品なリボンは、まるで元の居場所へと帰り着いたかのように
その箱に見事にデザインされた状態で煌めいていた。
女の子はとても嬉しそうに、女性に大きな会釈を幾つかして、
携帯のカメラでその ≪作品≫を写した。
その後間もなく、女の子は自分の席に戻り
メールを打ったりメッセージカードを書き込んだりしながら、女性が掛ける短めの言葉に
にこやかに頷いていた。
暫らくして、女の子が夢中になっているその横を、
目立たぬよう、邪魔せぬよう、静かに女性がその場を離れた…。
ハッと気づいた女の子は先程よりも更に大きな会釈を一つして、
胸の前で小さく手を振り女性を見送った。
女性は軽く片手を上げてソレに答え、足早にその場を去っていった…。
そんな光景を見て思わず顔を緩ませてしまった自分に気づき、
慌ててコーヒーカップを目の前に掲げ、ニヤつく顔を隠したけど、
カップの陰では、またその小さな幸せに一人浸っていた…
あのプレゼント、誰のもとに贈られるのかなぁ…
今回は体験談を私小説風に書いてみました。
スタッフ佐藤でした。