68. I satisfy life in a meaning to live | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。






 錬太郎の思考だけが、深夜の空間を彷徨っていた。


 まるで、それが人間の証でもあるかのように。


 メディアではこれ見よがしに評論家は社会を他人事のように批評し、あるものは衝動の趣くままに、希望を吐き捨てるかのように日々を過ごす。社会的規範などどこ吹く風。。。そんなものどこかに捨ててしまっているのだろうかと思えるほどだ。。。



 あるものは、人生を価値あるものにしようと必死に夢を追いながら生きる。


 あるものは、生きようとしても生きることすら拒まれる病に、自らの限りある目の前の生を精一杯生きる。


 その生を救おうと多くの人々は研鑽努力する一方で、また、自ら命を落とすものも。。。人の生を奪う武器も、そしてそれを生活の糧にするもの。。。



 しかし、どの生も輝いてこの世に生を受けたに違いない。



 雄叫びをあげ、自らの生きる証を周囲に知らしめるかのように。


 いったい、人間はどこにその証を置き忘れているんだ。




 確かに、人間とは愚かだ。



 だが、その愚かさがあるが故人類は生を繋ぎとめてきたのだろう。



 繰り返す殺戮にも愛を盾に人々は生き延びてきた。




 人類は、ごまかしている。




 いや、うぬぼれているのかもしれない。





 自らが築き上げてきたとでも言いたげな文明の規範で、その危機を乗り越えてきたとでも言うのか。


 自らが生きようとして生きているのだろうか?いや、この地球という環境の中で蠢き生かされているに過ぎない存在なのかもしれない。



 


 錬太郎の思考の旅が続いた。







 ただ、人間は自らの生を、生きる意味で満たそうとする。




 それが、創造主である彼らには無かったのだろう。だから、人間から何かを学ぶ必要が出てきたのだろう。。。




 自らの姿を如何様にも投射し、思うがまま人類を創造してきた。しかし、彼らはに悩みが無かったのだ。生きる意味など存在しなかったのだ。永遠の生を持つ彼らに生きる意味など無いのかもしれない。生きる意味で生を満たすことなと考えもしないことなのだろう。


 

 だから、悩む必要も無かった。全てが見えるものに投射し具現化できたから。





 彼らの世界は破滅の一途を辿り始めているのかもしれない。。。そう錬太郎は思い始めていた。





 目を閉じたまま思考の旅を続けていた錬太郎に、声が聞こえた。









「そう。。。」





「ん?ヒマちゃん?」





「うん」





「どうしたんだい?深夜に?」





「錬太郎。気付いたのね。。。」





「えっ?何が?」




「錬太郎に見せた我々の世界はもう長くは続かない。自らを人格へと投射し始めた我々は、自らが想像してきた人類の自立に。。。いま遭遇しているの」



「ヒマちゃん。。。僕は。。。」





「そう、我々の世界が滅亡することは分っていたの。自由に世界を創造し続けて来た我々の世界でも、人格化されたもの達は憎悪、流血、自由を無視した自我の欲望の赴くまま対立を招き、破滅の道を歩き始めた。だから、アッ君や私は幾人もの人格を人間社会に送り込んできた。それが“Invisible man”。。。”目に見えない男”。。。なの」




「じゃ、俺の他にも“Invisible man”。。。”目に見えない男”。。。がいるの?」



「たしかに存在していたけど、多くのものは見えるものに囚われ、自らの我々創造主達が持つ能力を使い欲望のまま人類を危機に陥れることばかりだった。その度に、アッ君と私は解き放たれた彼らを消してきた。我々の世界を危機から救うための思考を手にするには至らなかった。錬太郎。。。貴方もその一人だった。でも、錬太郎は見えぬものに愛を見出し、人間が”生を生きる意味で満たしている”ということに気付かせてくれた。一度死に、そして蘇り、もう一度自らの生を生きる意味で満たそうとした」




「そうかもしれない。生かされていた活かされていた。。。ヒマちゃん。。。君とアッ君の本当の名前って?俺はこれから何をすればいいんだ?教えてくれよ?」





 すると、ヒマちゃんの声は何も聞こえなくなっていた。




 またしても、錬太郎は思考の旅から放り出された。




 錬太郎は、これからの生をどう満たしていくのだろう。







 人は運命と出会う時、本来の自分の姿に戻るのかもしれない。。。







 いつしか思考が停止し眠りに就いていた錬太郎だった。




 翌朝、和也の鼾で目が覚めた。



 呑気な奴だと、その寝顔を見て少し冷え込む室内から朝日の差し込む窓を目を向けた。






 また、日が昇る。今日一日が始まろうとしていた。






 トースターに食パンを差し込む。パンが焼ける匂いと珈琲の香り。。。この部屋を漂う空気。。。何一つ、どれ一つ欠けても自分の存在を確認するには必要不可欠だと感じた。




 和也の鼾も、その一つに入れておこう。。。





 こんなもんさと、目じりが緩み珈琲を一口。。。



 大丈夫さ。。。人間って。。。けこういけるぜ!









 つづく