小坂 俊史
サイダースファンクラブ (1) サイダースファンクラブ (2)

4コマ推進運動中です。とにかくたくさんの作家さんたちをば!ということで小坂俊史先生。

新刊発売ということでこの作品を扱ってみました。


◆ キャラと設定


主人公となるのが売れない女子スリーピースバンド・サイダース。

ギター・ボーカルのやよい、ベース・サブボーカルのむつき、ドラム・コーラスのしわすで構成されています。

ちなみにこの3キャラ、同氏作「せんせいになれません」の脇役(とはいってもある程度キャラの設定はされていますが)生徒で、姓名そのまま、顔も同様でファンとしてはニヤリ。

ネタに絡むキャラ設定はその他いろいろありますが、ここでは言及を避けます。

ちなみに以前レビューした山名沢湖先生「委員長お手をどうぞ」2巻、卒業アルバム委員長の回でもアルバムの中でエキストラとして登場しています。大活躍ですね(笑)。


◆ 「好きなものを描いた」


「せんせいになれません」でのデビュー以来、竹書房・芳文社での4コマ作品を中心に活躍を続ける小坂先生。

小学校もの、家族もの、オムニバスもの、編集者ものとその設定は多岐にわたります。

この作品も例に漏れず。しかも1,2巻ともにあとがきには「好きなものを描いた」という記述。

そのせいかライブその他の舞台的なものの描き込み具合が(裏話的なものも含めて)強い傾向にあると思います。

また、都合により書き下ろしが多くなっている2巻では(でも都合=うっかりミスを帯にまで出してプッシュすることないと思う)音楽雑誌がサイダースをレビューした架空の記事などもつき、「好き」具合を伺わせてくれます。


◆ 作風と定番のネタ


小坂先生は近年珍しくなっているといわれる「正統派4コマ」として評価を受けている面があり、また僕自身もそうであると思っています。

媚びないが見やすい絵柄、“展開する”世界ではなく“ネタの蓄積”としての世界、多少突飛な設定に堅実なオチ。

ただひたすら「4コマ作家」として評価を受けるのも頷けます。

この作品も例外ではなく、全体的に見てもムラの少ない作家さんであるようにも思います。


また、4コマにはキャラ設定が持つアクを利用し、「定番」のネタを仕立てるという手法があり、この作品でも各キャラにそれが見られます。

まず、やよいは適当な性格やライブでの弦切り癖、ライブチケットを友人ヤスコに売るネタ(これは毎回ラス2を飾る定番中の定番)など。

むつきは左利きで欲しいベースが手に入らない、バンドに不満があり脱退したいと思っている(時間の経過に伴いなくなってはいきますが)など。

しわすはオカルトの才能があったり、サイダースにはもったいないぐらいドラムの技術があったり。


その他もライバルバンドであるウォルナッツ、のちにレーベルメイトになるイロモノバンド・バニーズやサイダースが所属する事務所の服部社長など脇を固めるキャラもしっかり立っており、いい意味での堅実、安定さを感じます。


◆ メディアミックスとデザイン


1巻では(既に解散してしまいましたが)The ClicksによるイメージCDが全員サービスとして制作されました。

全員サービスが行われること自体が4コマでも非常に珍しいことで、僕もかなり驚いた覚えがあります。

書き下ろしの曲もすごくスタイリッシュで、サイダースの“イメージCD”としての役割を果たして余りあるものだったように思います。

また、この作品の表紙はいっぱいにイラストが描かれる傾向にある4コマ系単行本とは一線を画したシンプルでオシャレなものになっており、「このままライブハウスとかに置ける感じ」(どこかの掲示板で読んだコメントです)だとの評価も。

周りの展開やその辺も含め、僕個人としては大好きな作品です。


◆ まとめと呼ぶにはあまりにも


小坂先生といえばまずは「せんせいになれません」を外して語れないとは思ったんですが前述の通り新刊発売を機にレビューする運びになりました。

(そんなこと言ってたら重野なおき先生の「Good Morning ティーチャー」とかおーはしるい先生の「夫婦な生活」とか似たようなのいっぱいなんでやってられないっつーのもありますが)

いずれそちらのほうも扱いたいと思いますが、次回はまた別の作家さんで。


みずしな孝之先生や胡桃ちの先生ほかを今後予定しています。


それではまとめと銘打ってちっともまとめないという暴挙を犯しつつ、さようならです。