「私は、病気だ。」

自分の中で結論は出た。

しかし、結論が出たからといって何も変わらなかった。

相変わらず暴走する食欲、一日中頭から離れないカロリーと痩せることへの執着・・・。

さらに、「自分は病気かもしれない」という不安が加わった。


私はだんだんと、家に引きこもるようになっていった。

体重が増えるにつれ、人に会うのが苦痛で仕方なかったからだ。

何とか学校には通っていたが、休日は友人の誘いを何かと言い訳をして断り続けた。

休日は、ほとんどの時間を過食に費やした。

常に食べ物を口に運んでいる状態だった。

友人に嘘をつき、自分の食欲のコントロールも出来ず、獣のように食べ物を貪る・・・。

情けなくて、虚しくて、自分が恐ろしくて・・・。

それでも私は、食べることが止められなかった。

もうどうにも出来なかった。どうすることも、出来なかった。


過食の頻度も量も次第にエスカレートしていった。

ほんの数時間前に過食をし、まだ胃に食べ物がパンパンに詰まっているのに、目の前に食べ物を出されると食べずにはいられなくなっていた。

「もう飲み込めない・・・」

と気持ち悪くなるまで食べても、なお無理やりに食べ物を口に詰め込んだ。

「吐ければ、もっとたくさん食べられるのに!!」

とさえ思った。


体重計に乗るたびに、表示される数値は大きくなっていく。

「あぁ・・・こんなの私じゃない!

 痩せなくちゃ・・・痩せなくちゃ・・・痩せなくちゃ!!」

そう思った瞬間、私の頭が叫び始める。

「食べたい!食べたい!!食べたい!!!」

次の瞬間、私は泣きながら食べ物を口に詰め込んでいた。


食パン、スナック菓子、夕飯の残り物、アイス、クッキー、冷凍食品、カップラーメン・・・


「足りない・・・足りない・・・もっと、もっと・・・もっと!!」


お腹は妊婦のように膨れ上がり、座っていても横になっても苦しくて苦しくて、呼吸も浅く速くなった。

倒れこみながら私が考えていたこと、それは


「もっと食べたい、食べ足りないのよ!

 何で苦しくなるのよ!!

 私はもっともっと食べたいのよ!!!

 食べて、食べて、食べ尽くしたいの!!!!

 お願い・・・お願いだから、もっと食べさせて・・・」


もう一人では耐えられなくなっていた。

過食衝動も、痩せることへの執着心も、病気への不安も・・・それらは大きくなり過ぎて

私一人では抱えられなくなっていた。

それらを誰かに一緒にを抱えてもらわなくては、私の心も身体も壊れてしまうと思った。

私の精神状態は、ギリギリの所にまで来てしまっていた。



「お母さん・・・

 私、病気みたい・・・

 私、過食症みたいなんだ・・・」


19歳の冬

私は母に打ち明けた。


食欲が暴走し始めてから、半年が経っていた。