一人でできる | 渡辺やよいの楽園

渡辺やよいの楽園

小説家であり漫画家の渡辺やよい。
小説とエッセイを書き、レディコミを描き、母であり、妻であり、社長でもある大忙しの著者の日常を描いた身辺雑記をお楽しみください。

tskibi
 昨日月曜日、息子は代休であった。せっかくお弁当を作ってあげたのに学童には行かないと言い張り、習い事などもしていない息子は時間を持て余し、うちで折り紙を折ったりしている。しかし、仕事場に人も来はじめて、息子がちょっかいを出すので、追い出すつもりで「プレーパークに行って焼き芋をつくっておいで」と、指令をだす。新聞紙とお金を渡し、芋とアルミ箔を購入して、プレーパークでひとりで火起こしをしてひとりで焼き芋を焼き、火の始末までして帰宅すること。
「一人で全部できるかな?」と、言うと
「だいじょうぶだい」と、飛び出していった。
 プレーパークは、以前も書いたが、近所の公園の中で自然のままの場所で子供が自己責任で遊ぶところだ。火を起こすのもかまわない。常にプレーパークの大人が常駐していて、子供達に目をくばっていてくれる。
 午後、お昼過ぎ、たき火の匂いを体中から立ち上らせて、むすこが泥だらけで帰宅した。
 新聞紙にはほかほかに焼けた焼き芋が包まれていた。芋を二つに割ると、ほっくり黄金色に焼けていた。
「おいしいおいしい」と、私はぱくぱく平らげる。息子は満足そうだ。
 シャベルで土を掘ってマッチと新聞紙と小枝で火種を起こし、薪を選んでたき火を作る。濡れた新聞紙に包んだ芋をアルミ箔でくるみ、たき火の中に並べてひっくり返しながら中まで焼く。それができたら、炭になった薪を取り出してから水をかけて火を消し、土をかけて埋めなおす。この一連の作業を、8歳の息子が一人ですべてひとりでこなしたことが、母はうれしい。美味しい焼き芋より、うれしい。
 なんというか、生きていく力、そういうものさえ身につけば、あとはなにもいらない、と、思う。