今月公開された映画「国家が破産する日」を見た。1997年のアジア通貨危機の韓国の国家破産を克明に描いた作品で興味深くおすすめだ。

物語は韓国銀行(韓銀)の女性バンカーが国家の財政破綻を7日前に察知するところから始まる。バンカーは、危機を国民に公表するよう中央銀行総裁や政権幹部に伝えるが相手にされない。

「昔もそうした話はあった」「今まで起きていないじゃないか」などの反応を繰り返すシーンが印象的だった。私が日本の財政破綻を心配し政策提言をするたびに、国会内で言われたセリフとまったく同じだ。未曽有の危機でも「起こる前」はこうしたものである。

同様に国家破産を予期した証券マンも登場する。破産を絶好の「投機」と考え、会社をやめ、投資家を募る。「バカなことあるか」という反応もあれば「一緒にやろう」と大金持ちになる人も出てくる。まずは、資産をありったけ外貨に換え、そのあとは暴落した不動産を、いずれ価値が回復すると買っていた。私も、資産防衛は外貨と一等地不動産だと経営者仲間と話す。

同時進行で、ある下請けの町工場の経営者も出てくる。それまで手形を嫌い、現金決済をしてきた社長が、大企業との取引で、普段に反し手形決済を行うが、国も大企業も破産し、手形は紙くずとなり、苦しむ姿がある。危機をあらかじめ公表していれば、救えたかもしれず、経営者目線でとにかく切ない。

破綻後、国際通貨基金(IMF)が、再建プログラムを提示する。合意をしなければ、融資をしないと強硬だ。韓国が受け入れたのは、「付加価値税の範囲を広げ税金をとりなさい」「回復の見込みない金融機関は潰しなさい」「外国人の株式投資の限度額を55%まで上げなさい」などの要求だった。

映画の中のIMFは、「進駐軍」のようだ。韓国産業や韓国国民に対して相当ドライな提案であり、有望企業は軒並み外資化していく。失業率は2%台だったものが、8%まで上がった。金利は一時30%を超えた。多重債務、サラ金地獄、夜逃げが発生し、日本も破産したらこうなるんだろうと背筋の凍る思いがした。韓国が破綻を招いた理由の1つは、外貨準備高が少なく、信用不安が起きたからだった。ただ、日本の外貨準備高は万全といわれているが、マネーストック比では決して十分ではないことも理解してほしい。

韓国は国家破産する直前までOECD加盟など「表向き好景気」だった。日経平均が年初来高値を更新するなど、日本も危機意識が表に出ていない。財政再建につながる、増税も予算削減も、票にならないから政治家は本腰をいれない。しかし、そうした政治家に一票を入れ続けた末路は…。「国家が破産する日」のキャッチコピーは「その時、政府は何をした…」である。何もできずIMFのいいなりだった。財政破綻を警告した拙著「警鐘」も、増刷の報がありおかげさまで売れている。意識の高い人も多い。日本の借金額を今一度意識してほしい。

日本を韓国のようには、絶対にしたくない。

【夕刊フジ】「渡邉美樹経営者目線」(毎週火曜日連載)より