私のような昭和世代の方にとって、子供の頃食べたスパゲティーといえば、ナポリタンかミートソースだったのではないでしょうか?
私は特にトマト味のナポリタンが大好き。
終戦後、横浜にあるホテルニューグランドの第2代総料理長・入江茂忠という方が進駐軍の兵士が具無しの麺にトマトソースを絡めて食べているのを見て、「それでは味気ない」と生トマトやピーマン・ハムの細切りを加えたスパゲティーを考案したのがそのルーツだとか。
(※他に諸説あり)
この日本独自のバスタ料理であるナポリタンに関して、私には忘れられない思い出が・・・。
それは、今から35年前の今日・1983(昭和58)年11月5日のこと。
当時の私は社会人3年目。 担当エリアの築地で取引先の社長さんと午後、喫茶店に入った時のこと。
その年は巨人-西武の球史に残る激烈な日本シリーズが戦われたのですが、まさにその第6戦が中盤に差し掛かったところでした。
店のオーナーが大の巨人ファンだったゆえに、お客さんも全員巨人ファン。
当然私達2人も巨人ファンでしたから、目は店に置いてあるテレビに釘付け。
午前中に仕事を終えた市場関係者が中継見たさで集まっていて、店内はほぼ満員状態。
巨人が3勝2敗で王手をかけたこの試合、8回まで1点リードされていた巨人が9回表に2点を取って逆転!
しかもその裏のストッパーとして、シリーズ大活躍の西本投手が登板。
もう日本一は、ほぼ決まり・・・店のオーナーは大喜びで、
「よっしゃ~、巨人が優勝したら全部無料だァ~。」
と絶叫して、店の中はお祭り騒ぎ。
コーヒー1杯で粘っていたお客も 「おぉっ、マスター太っ腹!」 と大喜び。
口々に料理を注文し出し、私も 「ラッキー!」 とばかりにスパゲティーナポリタンの〝特盛り〟をオーダー。
皆が巨人優勝の瞬間を見られる・・・と思っていたのですが、なんとその西本投手が打たれて同点に追いつかれ、勝負は延長戦に突入。
そして10回ウラに投入した当時のエース・江川投手も西武打線につかまり、遂には金森選手にサヨナラ・ヒットを打たれてまさかのサヨナラ負け。
スパゲティーを頬張りながら応援していた私が呆然としているところに、オーナーの冷たい声が追い討ちをかけます。
「あ~あ、負けちゃった。 じゃあみんな、料金はいただくョ。」
「えぇ~、そんなアホな!」
という店内の大ブーイングに少しもひるまず、オーナーは
「優勝したらって言ったろ~が。」
まさかの敗戦で不機嫌モード全開の強面マスターには、もう誰も逆らえず・・・結局は喫茶店だけが大儲け。
金欠だった私は
(こんなことなら、余計な注文しなけりゃ良かった。 トホホ・・・。)
と嘆いたことを、今でも鮮明に憶えています。
やっぱり、食い物の恨みは怖い・・・というか、忘れない?
今は殆ど口にしなくなったナポリタン・・・コンビニで見かけるたびに、今は無き築地市場でのホロ苦い思い出が脳裏を掠めるのです。