皆さんは、アメリカで〝ミスター・ベストセラー〟と呼ばれている作家が誰か、ご存知でしょうか?
おそらく中高年の方なら、名前を聞けば 「あぁ、あの!」 と思い出すはずですが・・・今日はその
シドニー・シェルダン
Sidney Sheldon
の命日・没後10周年にあたります。
1917年、イリノイ州シカゴでユダヤ系の両親の間に生まれたシェルダンは、17歳の時に躁うつ病で自殺未遂の経験があったとか。
それを乗り越え20歳から数年間ハリウッドの映画産業に関わると、第二次大戦中兵役に就いた後、ブロードウェイで劇作家に。
またテレビ・映画の脚本も手掛け、1947年には『独身者と女学生』でアカデミー脚本賞を受賞しています。
その彼が小説を書き始めたのは、1969年から。
第1作目の『顔』(The Naked Face )はいきなりアメリカ探偵作家クラブ主催のエドガー小・処女長編賞のノミネートされるなど数々の賞を受賞。
そして2作目の『真夜中は別の顔』(The Other Side of Midnight ) はニューヨーク・タイムズでベストセラーに選出されるなど、いきなり一流作家の仲間入り。
そして彼の名が日本で一躍有名になったのは、おそらく1982(昭和57)年に『ゲームの達人』(Master of the Game )が出版されてから。
この時話題になったのが、本の表紙にも記載されている〝超訳〟でした。
私は初めて聞く単語でしたが、それもそのはず・・・これはこの本の出版元・アカデミー出版の天馬隆行社長が考え出した造語。
これは原作を忠実に翻訳するのではなく、作者の意図を尊重しつつ日本語独特の語感を損なわないような翻訳で、時には文章の順番をも入れ替えるという、かなり大胆な翻訳のこと。
言ってみれば、〝意訳を超えた翻訳〟ということでしょうか?
この造語は登録商標で同社のみが使える言葉だそうですが、この〝超訳〟が功を奏したのか、同書は上・下巻合わせて750万部を売る大ベストセラーに。
一昨年、漫才師の又吉直樹さんが書いて芥川賞を受賞し話題となった『火花』が約240万部だったそうですから、その人気ぶりが分かります。
これだけ売れたのですから、おそらく皆さんの中にもお読みになったことがある方が多いはず。
また本を読まずとも、この作品をはじめ 『血族』・『女医』 とテレビドラマ化された作品もありますから、全く彼の作品に触れていない方は少ないでしょうネ。
えっ、オマエは読んだのかって?
はい、もちろん・・・ただ天邪鬼の私は、その超訳ってのに抵抗感があり、原書を取り寄せて読みました。
しかし如何せん私の拙い英語力では、〝一度表紙に触れたら、手にくっついて離れない〟と言われる程の面白さは実感できず。
読み終わるのに2ヶ月もかかってしまった苦い思い出が・・・。
その後もベストセラー作品を発表し、累計3億冊以上売った彼が90歳の誕生日を直前に控えて肺炎による合併症で天に召されたのは、2007年1月30日のこと。
彼はこの世から去りましたが、彼の作品は永遠に残ります。
もしまだ読んでいない方がいらっしゃいましたら、是非一度お読みになってください。
あらためて20世紀を代表するベストセラー作家のご冥福をお祈り致します。