コメ行政の矛盾が影響 生産目標削減
2012.11.28 23:32

 主食用米の生産数量目標が4年連続で引き下げられた。背景には、国民のコメ離れに歯止めがかからない現状がある。だが、農林水産省はコメの消費拡大に向けた施策を打ち出しながら、生産調整(減反)の強化で需要喚起の特効薬である価格下落は阻止している。増産と減産という相反する施策が同時並行で進められている格好で、定まらないコメ行政が生産目標にも影響している。

 「消費拡大策はどうなっているのか」。28日に開かれた食糧部会で、委員の一人が苦言を呈した。総務省の家計調査では、コメは平成23年の世帯当たりの支出額でパンに抜かれ、24年の購入量も6月から4カ月連続で前年を下回る。農水省の担当者は、朝食市場の開拓や学校給食への普及を挙げ、「ほかの施策にも取り組みたい」と述べた。

  だが、効果は限定的だ。消費拡大策の一方で、農水省は米価下落を止めるために減反を年々強化。その結果、現在も価格が高止まりし、供給減がさらなる需要の先細りを招く「コメ離れスパイラル」を生んでいる。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもの」と揶揄(やゆ)する。

 矛盾する政策の背景には農業の構造上の問題がある。日本のコメ栽培は耕地面積が平均(2ヘクタール)未満の農家が約9割を占める。減反をやめ価格が下がれば、「淘汰(とうた)されるのは副業を持つ小規模農家ではなく専業コメ農家」(農水省幹部)になるからだ。

 現状の打開には、農地集約など生産コスト引き下げにつながる構造改革が不可欠。だが、農水省は減反の対象外である飼料用米や加工用米にも補助金を給付しているため、零細農家でもコメ生産を継続できる仕組みとなっており、農地集約が進んでいない。


(msn産経)