ZAKZAK編集部 2012.11.09

 中国で開幕した第18回共産党大会。胡錦濤総書記(69)をはじめ、次期総書記となる習近平副主席(59)ら最高幹部の権力闘争が続くなか、胡氏は同大会で「発展こそ絶対的道理」と改めて成長路線を宣言した。だが、いまの中国は、前へ進むどころか崩壊する危険性すらある。一枚岩ではない党事情と急成長で生じた民衆の格差。そこに、いまも人気を誇る重要人物の影がチラつく。専門家は「クーデターもある」と警戒する。

 開幕中の共産党大会で胡氏は、発展とともに「和諧(調和)社会」を掲げ、貧富の格差の是正に取り組む姿勢を示した。次期総書記の習氏はその路線を引き継ぐことになるが、たまりにたまった国内の不満は容易に解消できそうにない。民衆の抗議活動は頻発し、インターネットでは当局に批判的な声が渦巻いている。

 今年に入って習一族の300億円に上る蓄財が暴かれ、習氏と敵対する胡氏側の温家宝首相(70)、その一族が計2160億円を不正蓄財していたという報道も飛び出した。「リークの撃ち合いが象徴する権力闘争と、その巨額な蓄財に民衆はあきれかえっている」(外交筋)という。

 『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)などの著書で知られるジャーナリストの富坂聰氏は「警戒すべきは尖閣問題で暴徒化したような不満を抱える民衆。彼らがひとつの勢力としてまとまれば政権基盤を脅かしかねない」と指摘する。

 急激な経済成長の恩恵を受けられなかった大量の「負け組」が、中国全土で発生した反日デモに参加した。彼らは「革命の父」毛沢東の肖像画を掲げ、革命初期に立ち返るよう政府に要求。実はこのとき、もう1人、変革の象徴に祭り上げられた人物がいた。それが薄煕来・前重慶市党委書記(63)だった。

 薄氏は今年4月、妻の英国人実業家殺しへの関与と、数十億ドルに上る不正蓄財疑惑で失脚したが、いまだに人気が高い。

 「重慶市のトップ在任時、薄氏は毛沢東時代の革命歌を歌わせる政治キャンペーン『唱紅』を展開し、犯罪組織の摘発に乗り出すなど大衆的な人気を得た。党幹部の中には、薄氏のシンパも残り、不満分子と結びついてクーデターを起こす危険もある」(富坂氏)

 薄氏のシンパと党幹部の不満分子、そこに民衆が加わって濁流となる。そうなれば、「新体制などひとたまりもない」(先の外交筋)。いまの中国は何が起きてもおかしくない。