都知事尖閣調査 平和的な解決を妨げるな2012年8月26日


 日中間の不信の連鎖を断ち切るどころか、不毛な対立をエスカレートさせるだけではないか。強い危惧を抱かざるを得ない。
 東京都の石原慎太郎知事が、尖閣諸島の購入のため政府に上陸申請した現地調査の概要を発表するとともに、さらに10月に再調査を実施し、その際には同行する考えを明らかにした。石垣市の中山義隆市長も都の上陸が許可されれば、同行して上陸する考えを示した。
 石原氏は会見で「再調査の時は私も行きます。現場で指示する。逮捕したらそれで結構だけどね」と述べたが、確信犯的な挑発行動は厳に慎むべきだ。仮に上陸ともなれば、中国国民の領土ナショナリズムと反日感情を一層あおるのは間違いなく、尖閣問題の沈静化など望むべくもない。
 今月15日の香港の活動家の魚釣島上陸に対抗し、19日には東京都議ら日本の地方議員ら10人が上陸したが、思慮深く、冷静な対応とは到底言い難い。確認するまでもないが、尖閣諸島は日本の固有の領土であり、実効支配している紛れもない現実がある。こうした中、日本側がことさら領有権を主張する過激な行動に走ることは、中国を刺激し、東アジアの安全保障環境を不安定にする。国際社会の支持が得られるとはとても思えない。
 日中双方には、実力行使を訴える強硬派と、冷静な対応を求める穏健派が存在する。挑発的な行動を互いに繰り返すことは双方の強硬派をより先鋭化させ、問題解決を遠ざけるだけだ。
 国民感情を高揚させる領土問題は、武力紛争につながる可能性が高いことは歴史が証明済みだ。裏返せば、異なる主張がぶつかり合う領土問題はそれだけ解決が難しい。ましてや石原氏が主張する尖閣諸島への自衛隊常駐といった独断的な解決手法では、中国国内の穏健派の反発さえも招きかねない。
 そうなれば、中国も過激な国民の声を背景に、尖閣近辺への軍隊派遣などの対抗措置を取らざるを得なくなる恐れがある。偶発的な衝突の可能性は高まり、一触即発の最悪の事態を招くことは目に見えている。
 対立関係を激化させるだけの不毛な泥仕合に一刻も早く終止符を打つのが先決で、日本政府は当面は都の上陸申請を認めるべきではない。日中政府は両国内の先鋭的な行動を抑え外交交渉による平和的解決に全力を挙げてもらいたい。