2011年09月06日
 「政策より 、政局、選挙を視野に入れた体制では…」。ある民主党議員は、思わず、こうこぼしました 。9月3日に小宮山洋子氏が厚労相に就任したのに続き(『「医療には問題が多いという認識」、小宮山厚労相』を参照、野田政権の評価に関するアンケートはこちら)、9月5日に副大臣、政務官が決定したものの、今回の人事から、政策の方向性、各者が担うべき役割があまり明確に見えないからです。その上、他省の三役も含め、民主党の支持母体の連合に関係する議員が多いという印象も受けます。



 新体制は以下の通りです。菅政権時代の5人の政務三役からの継続は小宮山厚労相のみ。2009年9月の民主党政権発足直後の鳩山政権では、足立信也参院議員、菅政権では岡本充功参院議員が、それぞれ医系議員として政務官を務めましたが、 今回は医系議員の起用はありませんでした。

◆野田政権の厚労政務三役
厚生労働大臣:小宮山洋子氏(衆院、東京6区)
厚生労働副大臣:牧義夫氏(衆院、愛知4区)
厚生労働副大臣:辻泰弘氏(参院、兵庫選挙区)
厚生労働大臣政務官:藤田一枝氏(衆院、福岡3区)
厚生労働大臣政務官:津田弥太郎氏(参院、比例区)


 小宮山厚労相は、9月5日の記者会見で「現在、1箱400円程度のタバコの価格を、約700円に値上げしても、税収は減らない」などと述べ、タバコ税の増税に意欲を見せています。また、2012年度診療報酬改定では、 2010年度改定に続き、プラス改定を実施したいという意向を持っているとされます。もっとも、小宮山厚労相は、副大臣時代は、雇用と子育て問題が担当で、医療分野に精通しているとは言えません。

 牧副大臣と、津田政務官は、それぞれ衆議院、参議院の前厚生労働委員長ですが、政務三役の中で、一番、医療に関する経験・知識 を有すると思われるのは、辻副大臣。略歴を見ると、1995年から2年間、財団法人医療経済研究機構研究部長として、「社会保障負担、国民負担、国民医療費などの分析・研究に従事」とあり、『21世紀初頭における社会保障負担、国民負担の展望 - 社会保障負担率、国民負担率に関する将来推計の一手法』などの著書も。厚労省内には、「特定の人脈に左右されず、かつマクロ的な視点から医療を捉えることが期待される。この点では評価するが、一方で個別の施策の議論にどの程度、付いていけるのか」と、期待と不安が入り混じった声が聞かれます。



 また、医療分野では、医学部定員増 ・新設をめぐる動向も注目課題ですが、医学部新設を支持していた鈴木寛文科副大臣は再任されませんで した。現在、議論の終盤に差しかかりつつある、「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」(『座長が 苦言、医学部新設の賛成派、反対派の双方に』などを参照)にどう影響するのでしょうか。