一般医療ニュース
2011年3月30日 提供:共同通信社

 福島第1原発事故で、避難、屋内退避の指示が出ている半径30キロ圏内に住んでいた女性が、避難先の神奈川県内で70代の母親を介護施設に入所させようとした際、放射性物質の有無を調べる「スクリーニング」を受けた証明書類などがないとして、入所を一時断られていたことが29日、福島県への取材で分かった。

 福島県は、ほかにも県外に避難した数人が、スクリーニングの証明書がないことを理由に病院などから受け入れを拒まれた事例を確認。放射性物質に対する過剰な反応が各地に広がっている実態が浮き彫りになった。

 福島県は13日から、県内各地で被災者に対するスクリーニングを実施。27日までに延べ約9万9千人が検査を受けたが、健康への影響が懸念されるケースはないという。

 厚生労働省は29日、福島県からの避難者であるとの理由だけで受け入れを拒否するなど過剰な反応を取らないよう、全国の介護施設に要請した。

 同県によると、女性と母親が住んでいた楢葉町は、全域が「避難区域」「屋内退避区域」とされた半径30キロ圏内に含まれる。2人は当初避難したいわき市内で16日にスクリーニングを受けたが、その段階では証明書が発行されていなかった。

 その後、神奈川県内の親族宅に身を寄せ、女性は母親を預けようと近くの介護施設を訪問したが「検査済みの証明書がなければ受け入れられない」と拒否された。女性は福島県に電話で証明書の発行を依頼。別の日に電子メールに添付して送付された証明書を施設に提示、入所が認められた。

 神奈川県は「この事例は把握していないが、スクリーニング証明書を入所の条件とするのは好ましくない。関係団体などに、条件としないよう指導を徹底する」としている。一方、福島県は「証明書がないと被災者が受け入れてもらえない現実がある」として、17日から始めた発行を今後も続ける構えだ。

※スクリーニング

 スクリーニング 原子力災害が発生した場合などに、周辺地域の住民らの人体表面に放射性物質が付いていないかどうかを調べる検査。サーベイ・メーターと呼ばれる放射線測定機を使い、頭、両肩、両腕など体の上部から足の裏まで全身を、服の上から1センチ程度離して計測する。放射性物質は頭髪や肘、手のほか、靴の裏などに付着しやすいが、基準値を上回った場合でも、服を着替えたり、髪や手を洗ったりすれば、落とすことができる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/03/30/134635/?portalId=mailmag&mm=MD110330_XXX&scd=0000336193