インボイス制度について、実務の手順に沿って お伝えしている12回のシリーズ、

今回は、免税事業者でお客様に事業者がおられる方を対象に

「どのように考えていけばよいか」を お話します。

 

目次

 1.影響を受けるのか受けないかの見極め

 2.リクスと納税 どちらを選ぶ? 

 3.実は様子見もあり? 当分はそんなに心配しなくてもいいかも...

 4.専門家に相談するという選択肢

 

1.影響を受けるのか、受けないかの見極め

 

 お客様に、事業者…会社や個人事業主さんがおられる方。

 例えば、美容院でも一般消費者のお客様の他に、芸能ブロダクションなどと契約している場合、

 飲食店でも会社の接待で利用するお客様がおられる場合。

 また、大手メーカーの協力業者としてお仕事をされている工事関係の方。

 作家や写真家、音楽関係のお仕事…いわゆるフリーランスと呼ばれている方で、

 企業や個人事業主さんよりお仕事を請け負っておられる方。

 サラリーマンでも副業で、企業の請負でWebライターなどをやっておられる方。

 この方たちは、免税事業者のままであれば、

 お客様や仕事が減ったり、相手先の負担増になる消費税分の値下げを要求されるかもしれません。

 「免税事業者」と取引すると、「仕入税額控除」ができず、消費税の納税額が多くなるからでした。

 

 <補足>  発注側が「免税事業者」に対して、値引き要求や、取引の停止などを強引に行うことは、

      公正取引委員会が「優越的地位の濫用」にあたるとしています。

      万一、一方的に対応された場合は、公的機関に相談することができます。

      ただ、取引条件の交渉そのものは「当事者間の自主的な判断に委ねられる」とされています。  

 

      ● 公正取引委員会のインボイス関連コーナー↓(Q&A や 不当な対応をされた場合の相談窓口など)

 

 ■ お客様が事業者でも大丈夫な場合もある

 

 ただ、お客様が事業者であっても、「免税事業者」であれば、消費税の申告をしません。

 前回「どうするインボイス⑧」で ご説明した「お客様が一般の消費者」の場合と同じです。

 また、「課税事業者」でも「簡易課税」という計算方法を選択していれば

 「仕入税額控除」できるか否かは関係ないので、こちらが「免税事業者」のままでも問題ありません。

 そして、唯一無二のサービズを提供できるとか、人手不足な業界でしたら有利な立場ですから、

 「免税事業者」のままでも心配ないかもしれません。

 

 このように、お客様や事業を取り巻く状況により、判断は変わってきますので、

 免税事業者のままでいると、影響を受けるのか受けないのかを見極める必要があります。

 

 ここで、「影響を受けない」と判断できる方は、

 インボイス制度に関して何もしなくも大丈夫です。

 このブログもここで終わりにして頂いて、大丈夫です。

 ここまで読んで頂きまして、有難うございました。

 

 「影響がある」「判断できない」という方は、引き続き、お読み頂ければと思います。

 

 ★ここまでお読み頂き、「仕入税額控除」って何?という方、「インボイス制度自体がよくわからない」という方は、

  以下の2つのブログをお読み頂ければ、スッキリして頂けると思います。

 

 

 

 

2.リクスと納税 どちらを選ぶ?

 

 「免税事業者」のままだったら、将来的に、お客様が減ってしまうかもしれない…。

 困りました。でも、大丈夫。

 届を出せば、「適格請求書(インボイス)発行事業者」になって「適格請求書」を発行できます。

 よかった。これで、取引先を失ったり、値引きを要求されずにすみます。

 

 ところが、「適格請求書(インボイス)発行事業者」になるということは

 「課税事業者」になるということなので、消費税を納めなくてはなりません。

 

 ●「免税事業者」のままでいて、納税しなくていいけれど、

   取引先の喪失や、値下げを要求されるリスク。

 

 ●「適格請求書発行事業者=課税事業者」となり、

   取引先は失わず値下げの危機はないけれど、納税額が発生する状況。

 

 ご自分の事業にとって、どちらが良いか判断しなければなりません。

 

 

3.実は様子見もあり? 当分はそんなに心配しなくてもいいかも…

 

 「免税事業者」のままなら「お客様や仕事が減ったり、値下げを要求されるかも...」と

 不安になられるようなことを書いてきました。すみません。

 将来的には、確かにその恐れはあるはずです。

 ただ、もしかしたら、当分は、それほど心配しなくてもいいかもしれません。

   というのは、次のような経過措置があるのです。

 

 1)免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置

 

  インボイス制度導入により、免税事業者への支払は「仕入税額控除」が認められなくなりました。

  しかし、経過措置がついて、6年間は免税事業者からの仕入れにも、

  一定割合「仕入税額控除」が認められることになっています。

 

   < 経過措置の適用期間と仕入税額 >

 

    【 適用期間 】       【 仕入税額相当額 】

     R5.10.1 ~ R 8. 9.30   仕入税額相当額×80%

     R8.10.1 ~ R11.9.30   仕入税額相当額×50%

 

 2)経過措置のおかげで

 

  この経過措置が、どのように影響するのか? 具体的にみていきましょう。

 

  課税事業者 甲社に、免税事業者 乙さんが、

  年間 税抜100万円(消費税10%)の商品を、納入しているとします。

 

  乙さんからの仕入れにかかる消費税は、

  100万円×10%=10万円

 

  乙さんが「適格請求書(インボイス)発行事業者」になれば、

  甲社は、この10万円を、「仕入税額控除」できます。

 

  「免税事業者」のままであれば、「仕入税額控除」できないので、

  消費税の納付額が10万円多くなります。

  つまり、10万円は甲社が負担することになります。

 

  しかし、経過措置のおかげで、乙さんが「免税事業者」のままでも、

  R 8. 9.30までは、8万円(10万円×80%)

  R11.9.30までは、5万円(10万円×50%)

  の「仕入税額控除」が可能です。

 

  R8.9.30までなら、全額「仕入税額控除」できる場合との差額は2万円。

  甲社にとって我慢できる額かもしれません。

  ただ、甲社に負担をかけることには変わりませんので、

  日頃の関係や取引額にもよるでしょうか。

  また、乙さん側で、値引きで対応するとしても、

  これも取引額にもよりますが、経過措置の期間であれば対応しやすいかもしれませんね。

 

  このブログをお読み頂いて、

  「何もしてなかったけど、やっとインボイス制度の内容がわかりかけてきた!」

  という方は、制度開始の10月までに焦って何らかの手続きをしてしまうより、

  しばらく、様子を見ながら、対策を練られた方が良い方もいらっしゃるかもしれません。

 

  ただ、くれぐれも、「なんだ、まだ、大丈夫」と、気は抜かないで下さいね。

  経過措置には終わりがあります。

  これを機会に、制度を理解して、対策はしっかり、たてていきましょう。

 

 

3.専門家に相談するという選択肢

 

 さて、ここまでお読み頂いて、どうでしょう?

 「免税事業者」のままでいた方がいいのか、

 「適格請求書(インボイス)発行事業者」になった方がいいのかの判断。

 なった方がいいと判断した場合の手続き、

 「適格請求書(インボイス)発行事業者」になってからの記帳、申告作業。

 慣れていなければ、かなり、難しいのではないでしょうか…。

 私個人の意見としては、税理士さんに相談されることをお勧めします。

 

 「そんなことを言われても、どうやって税理士さんを探せばいいの?」

 「まず、免税事業者のままでいた方がいいのか?課税事業者になった方がいいのか?

 の判断だけやってもらいたいんだけど、そこだけやってくれる税理士さんっているの?」

 そんな方のために、「専門家に相談したい時・税理士さんの探し方」について、

 別途、まとめました。よかったら、こちらをお読み下さい。

 

 

 そして、専門家に相談すると決められた方は、このブログ、ここで終わりにして頂いて大丈夫です。

 次回は、現在免税事業者の方が「課税事業者」になることを選択された場合、

 「どんな作業があるか」「税金の納付額がどれくらいになるか」などについてお話しますが、

 税理士さんに相談されるなら、直接、税理士さんに聞いてもらえばいいと思います。

 私のブログを読む時間は他のことに有効に使って下さい。

 

 ただ税理士さんに相談するにしても、

 知識がある方が税理士さんのお話も理解しやすいし、質問もしやすくなるとは思います。

 時間に余裕のある方、興味のある方、税理士さんに相談するのを迷っておられる方は、

 次回もお読み頂ければと思います。

 では、ここまでお読み頂きまして、誠に有難うございました。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------本ブログは、インボイス制度のポイントと取るべき対策を理解して頂くことを目的に作成しています。

そのため、敢えて細かいところは説明を省略している箇所もあります。

活用にあたっては、自己責任でお願いいたします。

最終的には、税務署や有資格者の方へのご相談をお勧めいたします。