3歳児よりはもちろん大きい!でも5歳児ほどの力はちょっと…の間を、行ったり来たり揺れ動く育ちの中で、“できるーできない”と両極端な判断基準を持ち合わせている4歳児時代。また、まわりの状況や大人の意図を汲み取る力も育ち、求められていることに応えようとしつつも実力が伴わなかったり、5歳児への憧れをたくさんため込み気持ちは大きく膨らむものの、緊張を前にすると本来の力が発揮されにくくなってしまう…という、発達的な側面を持ち合わせています。

 

これまでの4歳児の発表会の中身は、生活再現劇や劇ごっこが多かったように思います。4歳児は虚構の世界(絵本の中のお話のイメージの世界を共有して、登場人物になりきったり、また登場人物と手紙のやりとりをしたりする、ごっこあそび)をくらしの中で楽しむことが他のクラスよりも多いこともあり、ならばそうやって楽しんできたくらしを物語調にして再現する劇ごっこが“4歳児にとっての取り組みやすさ”であり、緊張しつつも自分達で越えていける一つの山(※課題と言い換えてもいい)いう認識があったように思います。

 

周りからどう見られているか?というところにとても敏感だからこそ、当日に大勢の視線を前にした時の緊張が自分のキャパを越えてしまい、舞台上で固まってしまう姿が度々みられました。委縮してただ立ち尽くすだけの姿に出会った時に、こちらまで胸を締め付けられる思いになり、自分達はそんな思いをさせてしまう取り組みをしたかったのだろうか?4歳児にとってどんな取り組みがこども達の育ちに合っているのか?を、改めて考える場を持つことにしました。

 

どんな取り組みにしたいのか?

・5歳児から憧れをたくさん受け取り、気持ちを大きく膨らませてほしい。

・憧れから膨らんだ「やりたい!」の願いのもとに出発し、自分達の手で叶えていけるものにしたい。

・その思いが、持ちきれない緊張に隠れてしまうものにはしたくない。

・大勢の保護者の前ではなく、日々のくらしの中(他のクラスのこども達や大人達の前)で発表することで、緊張もありながらも自分達で「やれた!」という手応えを感じてほしい。

・大人が決めた日程に向かわせるのではなく、自分達からやってみたいとなったタイミングで始めていく取り組み方がいいのではないか。

 

以上のことから、、

〇発表会当日は、4歳児の出番はなし、5歳児の取り組みを“みる”参加にする

〇自分達もやりたいと思いが膨らみ、その取り組みが充実したタイミングで、保育の中でみてもらう場をつくる

〇お家の人にはその様子を撮った動画を懇談会等で観てもらえる場をつくり、こども達の姿を共有する

…という風に、話し合いがまとまりました。

 

当日に4歳児の出番をなくしてみて気づいたことは、よりじっくりと5歳児の取り組みやこどもの様子をみられるということ。これまでそれぞれの取り組みがあった時は、自分達の取り組みに追われ実はじっくりとみることができていなかったことに気づかされました。

取り組みが5歳児だけになったことで、3歳4歳の子がじっくりとみられるようになっただけでなく、5歳児の小道具づくりなどに参加できたり、或いはそのスタッフ(裏方)として関われたりと、より近くで憧れを受け取り、それが園全体に広がっていることを実感をできるようになりました。0・1歳児が5歳児の模倣をしている姿からも物語ってくれています。

 

昨年(2022年)のなつめさん(※4歳児のクラス名)は、生活発表会後に「自分達もかりんさん(5歳児クラス名)みたいに、○○みせたい!〇〇やりたい!」と思いが膨らみ、自分達で中身や日時も決めた『なつめげきじょう』を、3月の平日に催しました。

 前日になつめげきじょうのチケットを各クラスに配りに行き、当日はほぼ全クラスのお客さんが集う中、緊張はあるもののそれを受けとめた上で自分達のやりたいことを叶えていくイキイキとした姿がありました。

 

終わった時にたくさんの拍手を浴びて高揚した表情が、やり遂げて一つ大きくなった誇らしさを語ってくれているようでした。

 

こどもの取り組みを話す過程で、担任が抱える思いについても触れることとなりました。

・過去の4歳児の取り組みがすばらしいものに見えてしまい、特に若手職員からすると“あんな風にはできない感”でも“あんな風にせねば感”を持ってしまう。

・できる人は優れている保育者、できない自分は劣っている保育者と思われてしまうように感じてしまう。

・それが強いプレッシャーになり、担任の緊張をさらに煽ってしまう

・他の職員がそんな風に思っていることはなくても、そのスパイラルに陥ってしまうことがあるのも事実。

・こどもの緊張も大きければ、大人の緊張も大きい…

・当日に向かう取り組みをやめたら、担任の気持ちにゆとりがうまれた!

…そんなことも話し合われ、共有されました。

 

今は終わった後の担任が「たのしかったです!」と第一声を語ってくれて、この事からも、大人もイキイキできる取り組みになっているんだと感じ、本当に良かったなーと実感してます。

 

次回、5歳児&ネーミング編につづく。

 

 

 

 

 

セノ