《新古今和歌集・巻第七・賀歌》

 

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永承(えいしよう)元年、

大嘗会(だいじやうゑ)悠紀方(ゆきがたの)屏風、

近江国(あふみのくに)守山(もりやま)をよめる

式部大輔資業(しきぶのたいふすけなり)

すべらぎをときはかきはに守(も)る山の山人(やまびと)ならし山かづらせり

 

 

☆☆☆☆☆【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆(訳者・峯村文人・小学館)の訳】☆☆☆☆☆☆☆☆

 

永承元年、大嘗会悠紀方の屏風、「近江国守山」を詠んだ歌

式部大輔資業

天皇を永久にしっかりお守り申し上げる、

守山の仙人であるらしい、

人々は皆、山かづらをしている。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コードで読み解いた新訳》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

 

(※『和歌コード』とは、

直訳では出てこない言葉の裏に隠された解釈のこと。

この和歌に込められた作者の意図をより深く読み取った

しじまにこのオリジナル訳です。)

 

 

題詞;1046年11月15日、

後冷泉天皇の大嘗会(天皇即位後、初めて行われる新嘗祭)にて

東方の祭場「悠紀」の屏風の絵を見て

「近江国守山」を詠みました。

 

作者;藤原資業

 

 

屏風に描かれている地、

「守山」は

 

「天皇を永久不変に

堅くゆるがぬ岩のごとくに

お守りする」

 

という意味があります。

 

大嘗会で

山かづらを付けている人々の様子が

 

天皇を永久不変にお守りする

 

守山の仙人(山中に住み、不老不死、神変自在の法を治めた人)

のように見えますよ。

 

✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎《和歌コード訳の解説》✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

 

藤原資業:988年〜1070年8月24日(享年83)。

一条天皇、三条天皇、後一条天皇、

後朱雀天皇、後冷泉天皇に仕えた。

 

後冷泉天皇:1025年8月3日〜1068年4月19日(享年44)。

在位:1045年1月16日〜1068年4月19日。

後朱雀天皇の第一皇子。

母は、藤原嬉子(藤原道長の娘)。

大弐三位(紫式部の娘)は乳母。

生母・藤原嬉子は、親仁(後冷泉天皇)誕生の2日後に逝去。

 

すべらぎ:すめらき:天皇。

 

ときは:永久不変。とこしえ。常緑。

とき:時間。時の流れ。時刻。時節。季節。時代。世。治世。場合。とき。折り。栄えているとき。羽振りのよいとき。勢いがあり盛んなこと。時勢。好機。当時。その場。

とき:僧の食事。仏事の食事。法要。法事。

とぎ:話の相手をして退屈慰めること、またその人。寝床の相手をすること、その人。看病すること、その人。

 

かきは:堅磐(かたいは):堅くゆるがぬ大岩。

 

もり:守ること。番人。子守。

もる:高く積み上げる。薬や酒を飲ませる。

もる:こぼれる。もれる。秘密などがばれる。はずれる。除外される。

もる:もぎ取る。摘み取る。

もる:守る。番をする。人目をはばかる。様子をうかがう。

 

やま:山岳。比叡山。墓地。天皇の陵。多く積み重なっていること。憧れたりあおぎみたりするもの。物事の絶頂。物事の最も重要な段階。

 

やまびと:山で暮らす人。山で働く人。炭焼きや木こりなど。仙人。山中に住み、不老不死、神変自在の法を治めた人。

やまひ:病気。欠点。短所。難点。心配のたね。気がかり。

 

ひと:人間。世間の人。大人。立派な人。人柄。性質。身分。他人。あの人。従者。あなた。

 

ならし:〜であるらしい。〜のようだ。〜だなあ。〜であるよ。

ならす:なれ親しませる。なれさせる。練習させる。習わせる。

 

やまかづら:ひかげのかずらを髪の飾りとしたもの。

 

かつ:一方では。すぐに。次から次へと。ちょっと。わずかに。すでに。前もって。あらかじめ。そのうえ。それに加えて。

つらし:薄情だ。冷淡だ。たえがたい。つらい。

かづら:つるくさ

かづら:つる草や草木を髪に巻いて飾りにしたもの。女性の髪が少ない時にそえるもの。

かづらく:つる草や草木の枝・花などを髪飾りにして頭につける。