毒親に育てられたという認識のある人は、自分の出産に消極的になる傾向があります。
逆に、望まない妊娠をしてしまう傾向もあります。
まずは妊娠に消極的な方の例から。
Kさん(28才、女性)は、母親と母方の祖母が「毒親」で、子どもの頃からダメ出しばかりされ、褒められた記憶はたったの一度もないそうです。
母親も祖母も、身内だけでなく他人に対しても冷たい見方をする人で、店員さんがちょっとしたミスをするだけで
「あの店員は失格」
「ありえない」
「辞めるべき」
と言うなど、とにかく他人のできていないところを拾っては責める、という人たちだそうです。
そのため、Kさんは自分のことも
「生きるに値しない人間」
と認識し、自分とすれ違った人に対しても、
「こんなクズのような人間の側を通るのは嫌だっただろう、と思ってしまうんです」
と、カウンセリング開始当初は話していました。
でも、Kさんはとても根気強く取り組める人で、認知療法に熱心に取り組み、未だに自分を積極的には肯定できないものの、相手の主観と事実を分けて考えられるようになり、むやみに自分を否定せずに済むようになっていきました
そして昨年、彼と5年の交際を経て、無事結婚もしました
今の一番の不安は「妊娠・出産・育児」のことだそうです
子どもは2人は欲しいと思っているとのこと、若いうちの方が妊娠の確率も高いため、なるべく早く欲しいと思っているそうなのです。
でも、
「私みたいな人間が親になったら、私の母や祖母のように子どもの人格を否定してしまうのではないだろうか」
「そもそも自分のような体験をしている人間は、出産しない方がいいのではないか」
「私のようにストレスを感じやすい人間のお腹では、健康な赤ちゃんは育たないのではないか」
「私は職場の上司から、『幼いね』と言われたことがあるので、妊娠したらその上司から『Kさんみたいな幼い人は母親になるのは無理なんじゃないの?』と言われるのではないか」←もし実際にこんなことを言われたら完全にマタハラです
「自宅から職場まで約1時間あるので、つわりの時は休みが増えてしまうかもしれない。今すぐ(※まだ妊娠前です)職場近くに引っ越した方が良いのではないか」
「電車やお店の中で、大声で泣き叫んでいる赤ちゃんを目にすると、もし自分の子どもが同じ行動をとったら、『周りの迷惑になるでしょ!』と言ってひっぱたいてしまうのではないかと想像して怖くなる。そんな親になるくらいなら産みたくない」
など、先々のことまで不安になり、カウンセリングに来るまでの数週間は精神的に不安定(・・・を通り越して混乱状態)になっていたそうです
Kさんにも伝えましたが、あまり先のことまで考えると不安に押しつぶされてしまいます
基本的に、あまり先のことは考えず、次の3つのことに〇がつけばOKだと思います。
・夫婦共に子どものいる生活を希望しており、夫婦どちらかに安定した収入がある。
・妊娠・出産・育児に関する最低限の情報収集ができる。
・自分(と胎児)を大事にできる。
(※身体を冷やさない、葉酸サプリを飲む、なるべくストレスはためこまない、アルコール・タバコ禁など)
さらに、下記について確認しておくと、なお安心かと思います
・メンタル不調時に頼れる人を確保しておく。
→ メンタル不調に陥ったことのある人は、妊娠・出産により再度不調に陥ることがありますので、頼れる身内が側にいると心強いですし、近くに身内がいない場合には、自分が住んでいる自治体で、出産~育児を通じて、どのようなサービスがあるのかについて確認しておくと良いと思います。
・働いている場合は、今のうちに「母健連絡カード」の内容を見ておく。
→ 「母健連絡カード」の利用によりさまざまな配慮を受けられますので、妊婦さんの安心に繋がると思います
・職場側が妊娠~就学(~小6まで)どのような配慮をしてくれるのかの確認
→ この内容によっては、職場に近いところへの引っ越しや、転職などについても考える必要が出てくると思います。
その他、出生前診断をするのかしないのか、についても考えておいた方が良いと思います。
出生前診断で、すべての病気がわかるわけではありませんが、赤ちゃんの病気を予め知っておくことで、病気や異常に対してどう向き合っていくかを予め考えておくことができるというメリットがあります。
ただ、堕胎するかどうかの選択のために出生前診断をするという場合、いざ「障害がある」と分かった場合、色々な葛藤が出てくると思います。そして、
堕胎という決断に至った場合は、心身共に傷を抱え続ける方もいらっしゃいます。
出生前診断のメリットとデメリットをよく考えた上で実施するかどうかを決めてください。
あとは、どの産院で出産するかも早めに考えておくことをお勧めします。
特に無痛分娩を考えていらっしゃる方は、妊娠が分かったと同時に無痛分娩可能な病院の診察予約をしないと、無痛分娩の予約が取れない、ということも多々あります。
産院の評判や、受けられるサービスなども調べておくと良いと思います。
私は一人目を出産した時、大部屋だったのですが、赤ちゃんが夜中も泣き通しだったために、隣の産婦さんにあからさまに舌打ちをされ、とても悲しくなりました(翌日から個室に移してもらいました)。
ちなみに上記の内容で不安を強める必要は全くありません。
よくわからないことを想像するとき、人は大体ネガティブな発想が優位になります。
楽しいことよりは不安なことの方が多く想像されるはずです。
でも、まだ起きてもいないことを想像するよりは、今現実的に準備できそうなことをしておいて、あとは「事が起きてから」でも間に合うことがほとんどです
まさに「案ずるより産むがやすし」です
赤ちゃんのいる生活を想像したときに、ついつい笑みがこぼれてしまう・・・というご夫婦でしたら、きっと
「産んで良かった!」という体験につながると思います
一方で、精神的に弱っている時には、判断力が低下し、思わぬ妊娠につながりやすいため、注意が必要です。
<望まない妊娠の例>
・妊娠が分かったので相手に連絡してみたところ、電話がつながらず途方にくれた。
出産したものの、父親の名前すら知らないし、子どもに障害があるようでこの先心配。
・相手が既婚者だと分かっていたが、その時唯一自分を支えてくれた人だった為、妊娠しても良いと思っていた。
でも、いざ妊娠してみると、自分一人で産み育てる自信が持てずに堕胎した。
・精神的に弱っていた時に付き合っていた人との子どもを妊娠していたようだが、もともと太っていたため妊娠に全く気付かず、ある日急な腹痛に襲われて病院を受診したところ妊娠が分かり、その3日後に出産した。自分でもびっくりした。
など、色々な方がいます。
堕胎した方も出産した方も、そこから自分と直に向き合うことを余儀なくされます。
出産した場合は、一生子どもに対して責任を負わなくてはなりませんし、堕胎した方も、自分の行動がもたらしたことの意味を問いつづけることになるでしょう。
残念ながら、望まない妊娠・出産や堕胎に関して、女性と痛みや苦しみを共にしてくれる男性はごくわずかだと思います。
精神的に不安定な上に、堕胎による心の傷、妊娠による不安を一人で抱えていくのは並大抵の大変さではありません。
まずは
「自分を本当の意味で大切にすること」
を大事にしてください。
<望んでの妊娠・出産のつもりだったのに、実はそうではなかった!?例>
・自分の婦人科系の疾患のために、子どもが欲しいなら妊娠を急いだほうが良いと医師から言われた。精神的に不安定だったものの妊娠を急いだことで、夫とのもめ事も絶えなくなり、主産後離婚した。
・自分が出産したかったというより、親から「出産して一人前」と言われていたので、出産しなければならないと思った。
・自分は出産したくなかったが、母親から「子どもがいないと寂しい老後を送ることになる」と言われ、さらに、母が子どもの世話をするというので出産した。出産すれば子どもをかわいく思えるかもしれないとも思ったが、自分は育児より仕事に専念したかったので、子どもが邪魔に思える。
など。
望まない妊娠・出産や、自分の親の期待に応えるための妊娠・出産は、
出産後も何かしらの苦しみを伴うことが多いですし、
望まれずに生まれた子どもはなおさら辛い思いをする可能性が高いです。
毒親に育てられた人は、自分の子どもを産む前に、
自分で自分を大切にできるように
なってください
自分を大切に扱えるようになりたいという方は、是非カウンセリングをご利用ください