裁判の判決においては、当事者間に争いのない事実や、証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実を「前提事実」と呼んでそれを大前提とし、さらに事実認定を加えたうえで法的評価を下す。しかし、本年3月27日付け東京地裁判決は、原告と被告大学との間で争いのない前提事実と矛盾する事実認定をするという過誤を犯している。
以下で引用する判決文は、「第3 当裁判所の判断」のうち、「1 事実認定」ではなく「2の(3)のウの(ア)権限の所在について」のものであるが、内容的には事実認定である(以下、それによって真実であると認定された事実を「上記認定事実」とする)。
国際日本研究専攻は、経済学論集の編集・発行主体として、通常の取扱いと同様に編集委員会案をそのまま是認するのではなく、改めて2月1日会議の場において編集委員会案の採否を諮ったものとみることができる。(36頁)
しかし、被告大学準備書面(10)の1は、本論説の不受理を編集委員会が決定し、専攻長はそれを2月1日の専攻会議で報告したと記しており、このことは、専攻会議で本論説不受理は決定されなかったことを含意する。また、原告も一貫して、2月1日の専攻会議で本論説不受理は決定されなかったと主張し、「不受理扱いという議案の内容にかかわらず、そもそも緊急提案がなされただけで、討議もなければ採決もない。にもかかわらず決議があったかのように取り扱われたのは「存在しない決議が外形上存在する」という決議の不存在のケース(会社法830条1項、834条16号)に該当する。」(原告準備書面(13)10頁)としてきた。2月1日の専攻会議で本論説不受理は決定されなかったという事実に関して原告と被告大学準備書面(10)とは一致しているので、この点は前提事実のひとつ(以下、「上記前提事実」とする)になる。
他方、被告大学準備書面(10)の1は本論説不受理の決定が編集委員会でなされたと主張しているのに対し、原告は編集委員会では決定されていないと主張してきた。
したがって、判決は、上記前提事実をふまえたうえで、本論説不受理が編集委員会で決定されたのかされなかったのかについて事実認定すべきところ、それに代えて、上記前提事実と矛盾し、原告と被告大学のいずれもが虚偽であるとする上記認定事実を真実であるとした。
なお、本日4月9日、全部不服につき東京高等裁判所に控訴状を提出しました。