04年度に始まった国立大法人化について、全86大学の学長の3分の2が肯定的に評価する一方、研究現場を預かる学部長の半数は研究面で否定的な反応を示したことが、国立大学財務・経営センターのアンケート調査で判明した。新谷(しんや)由紀子・筑波大准教授(科学技術政策)らの調査でも現場教員の6割以上が研究や大学運営に悪影響があったと受け止めており、大学トップと現場の意識の乖離(かいり)が浮き彫りになった。【西川拓、江口一】

 国立大学財務・経営センターの調査は08年12月~09年2月、全国立大86校の学長や学部長らを対象に実施。全学長と学部長の7割が回答した。

 学長の66%は「自校によい結果をもたらしている」と回答したほか、「大学の個性化」「管理運営の合理化・効率化」など15項目中7項目で8割以上が自校の法人化をプラス評価。「研究活動の活性化」「競争力向上」など5項目でもプラス評価が6割を超えた。逆に研究活動の活性化について学部長の21%は「マイナス」、30%は「ややマイナス」と答えた。

 一方、新谷准教授らは08年8月、全国の国立大の自然科学系の教員1000人を無作為抽出してアンケートを実施、183人から回答を得た。

 69%が予算配分の削減など「研究に悪影響があった」と答えたほか、「教員や部局の意思が反映されない」「教員が減り授業コマ数が増えた」など、「大学運営」で66%、「教育」で51%が悪影響があったと回答した。

 大学から教員に配分される基礎的な研究費は、回答者の平均で法人化前の年約150万円から法人化後は72万円余に半減したことも分かった。研究テーマの変更や小規模化を余儀なくされたケースも多く、こうした不満が法人化への低評価につながったとみられる。

 国立大学財務・経営センター研究部の水田健輔教授(高等教育財政)は「法人化後、教育・研究の現場がどれだけ傷ついたかを明らかにすべきだ。国立大が果たすべき役割や位置づけとそれを支える土台作りを国全体で考える必要がある」と指摘する。

 【ことば】▽国立大学の法人化▽ 国立大学法人法に基づき04年4月、全国89(当時)の国立大が従来の国の付属機関から、独立した法人に移行した。各大学は学外者を入れた経営協議会を設置し、文部科学相が認可した中期計画(6年間)に沿って大学を運営、文科省の評価委員会の評価を受ける。運営費交付金(09年度計1兆1695億円)は国から支給されるが、学長の権限や大学の自主性は強まった。10年4月から第2期の中期計画に入る。

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