コロのクリスマス
今夜はクリスマスイブ。どの家からも楽しい歌声が聞こえてきます。
犬のコロはおじいさんとおばあさんと一緒に住んでいました。
コロが窓から外を見ていると、空から白いかたまりが一つ、フワリフワリと落ちてきました。窓の処に止まったかたまりを不思議そうに見ていると、白いかたまりに足が出ました。そして帽子をかぶった顔がニョキッとでました。
コロはびっくりして、おじいさんのところへ走っていきました。おじいさんの手をひっぱって窓のところにつれてくると、白いかたまりは足も顔もひっこめてしまいました。
「ホー雪だね、今夜は冷え込むから明日はつもるだろうね、おばあさん」
おじいさんがいすに座ると台所からおばあさんが出てきて
「そうですね、きっとあすはつもりますよ」といって台所へ入っていきました。
コロはふしぎでしょうがありません。
「ぼくが見たときは足も顔もあったのに」
といっていると白いかたまりは
「ぼく雪のシロというんだ」といいました。
コロはおどろいて声もでません。
雪のかたまりは、手と足と顔をニョキッと出して
「おどろかしてごめんね。ぼく雪のシロと言うんだ」
コロはこわごわ
「きみが雪?本当に?」
と言いました。
シロは
「本当さ、ぼく雪の国からきたの」
「どうやってきたの」
とコロが聞くと
「雪のソリにのってきたんだ。鈴をつけた雪のトナカイに引っ張ってもらってね。ほらあそこに見えるだろう」
シロは窓から飛び出して空を指さしました。コロが見上げると暗い空にぼんやりと白いものが浮かんでいます。
よく見ると二ひきのトナカイがソリをひっぱっています。トナカイの首には雪の鈴が白く光っています。
「あれに乗ってきたの?」
「そうさとってもおもしろいぜ」
「シロ君、僕も乗せてくれないか」
「いいよちょっと待ってね」
そういうとシロは顔をひっこめました。
するとシロのからだはフワリフワリと空にあがっていきました。しぱらくすると、大きなソリを引いた二ひきのトナカイが鈴の音をならしながら空からおりてきました。ソリの中からシロが顔を出して、
「コロ君、乗ってもいいよ」
と言いました。でもコロは少しこわい気がしました。
「シロ君、僕が乗ってもこわれないかい」
「だいじょうぶだよ」
コロがソリに乗ると、トナカイは高い空に舞い上がりました。下の方からは愉しい歌声が聞こえてきます。
「コロ君、これから二人でクリスマスパーティーをしょうよ」
「でも何もないじゃないか」
とコロはいいました。
「大丈夫、何んでもできるんだから」
とシロはトナカイの首についている鈴を持ってきました。
「そんな物どうするんだい?」
「クリスマスツリーをつくるんだよ」
と言うとシロは雪で木の形をつくりトナカイについていた鈴をシャンシャンと振りました。
雪で作った木は、あっという間にきれいな赤や青の玉をつけ、金、銀の星をつけた素敵なクリスマスツリーになりました。
二ひきのトナカイはジングルベルの歌を歌いはじめました。シロは鈴をふってたくさんのごちそうを出します。大きな肉の固まりや、
果物、クッキーにシャンパンもでてきました。
コロはうれしくてしかたがありません。
トナカイのソリは町から山を越えて、となりの町へやってきました。
どの家からも楽しい歌声やにぎやかな話し声が聞こえてきます。
でも一軒だけ静かなお祈りだけしか聞こえてきません。
コロとシロはトナカイのソリから降りて窓のところに行きました。
家のなかをのぞくと、小さな坊やがベッドのそばでお祈りをしていました。坊やのお父さんもお母さんも病気で寝ているのでクリスマスの用意ができません。
「神様、来年は楽しいクリスマスが出来ますように」
「コロ君、僕達のごちそうをプレゼントしょうよ」
「うん、でもどうやってプレゼントするの」
シロもコロも考えました。
「二人ともこのままで行けば坊やは驚いてしまうだろうしどうやって行けばいいのかな」
「そうだ、コロ君がサンタクロースになればいいんだよ」
そういってシロはトナカイの鈴をもってきました。コロにむけて鈴をふるとコロはあっという間に赤い服を着たサンタクロースになりました。
「さあごちそうをふくろにいれようよ」
ふくろにごちそうをつめ終わると
「シロ君、どこからはいの?」
「エントツからさ」
「でもこの家にはエントツがないよ」
「大丈夫、すぐできるよ」
二人はソリに乗って屋根に行きました、シロが空に向かって鈴をふりました。そらから赤や青の光がパッと家を照らしました。
屋根にエントツが立ちました。コロがエントツの中に入ると、またトナカイ達が歌をうたいはじめました。家の中に入ると坊やはベッドに寝ていました。
「メリークリスマス」
コロは小さな声で言うと、テーブルの上にクリスマスツリーやごちそうをいっぱいならべました。そして坊やの靴下の中にはお菓子やおもちゃを入れました。
コロがえんとつから出るとエントツはすぐに消えてなくなりました。
コロとシロはソリの上から手をふりました。
「さようなら」
トナカイのソリは高い空に舞い上がりました。いつのまにか雪がふりはじめています。トナカイが子守唄を歌っています。
コロはねむたくなってきました。そして、いつのまにかねむり込んでしまいました。
「コロ、コロ」
とよぶ声がします。コロが目をさますと、おじいさんとおばあさんがそばにたっていました。部屋にはいつのまにかクリスマスツリーが輝いています。テーブルの上にはごちそうがならんでいます。
でもシロやトナカイはどこにもいません。
コロは窓のところに走っていって空を見上げると、雪はいつのまにかやんで月が暗い空に浮かんでいます。その月の光にてらされて二ひきのトナカイがソリをひっぱりながら空高くのぼっていくのが見えました。
「シロ君、さょうならまたきてね」
その夜はおじいさんとおばあさんと三人でたのしくクリスマスの夜を過ごしました
朝おきてみるとあたり一面に雪がつもって、門の外には大きな雪だるまがありました。
その雪だるまはシロにたいへんよく似ていました。首にはトナカイがつけていた鈴をかけていました。きっとシロがくれたのでしょう。おばあさんがコロの首につけてくれました。とてもよい音色で、コロが走るとシャンシャンと音がなります。
コロはその鈴をいつまでもいつまでも大事にしました。