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ポール・セザンヌ「座る農夫」1897年頃 55.0x46.0㎝ ひろしま美術館蔵
1839~1906

                セザンヌの視点

以前、セザンヌの「りんごとナプキン」で、セザンヌの視点のズレについて少し触れたのですが、
今回この作品「座る農夫」を見ていて、セザンヌの視点のズレとはどう云うものなのか考えてみました。

セザンヌより前の画家は、目の前の対象を描くとき、一点の視点から放射線状に物を見て画面に描いていました。
セザンヌはどうも視点が動きその動いた視点のまま描いているようなのです。

セザンヌの視点がどのように動くのか今までは想像もしませんでしたが、今回この絵を見て、床が異様に上がっていて、椅子の座る位置と同じ高さに描かれているので、セザンヌは描く対象物を一点の高さから放射線状に見て描いているのではなく、例えば、この床ですが、床に目の視点を下げて床の中心に視点を置き、画面にそのままの見える角度で描いています。

例えば部屋の床を見て、視点を上げ下げすると、床の端の高さが変わり面積が広くなったり狭くなったりします。
これと同じ状態がこの作品で起きているのです。
セザンヌの花瓶の口が手前に向いて見えるのも視点が動くからです。

多視点で視点がずれて描くと云うことは、画面が歪むと言う事で、今までの画家はバランスを考え避けてきましたが、セザンヌは意識して多視点で描いたのかそれとも不器用なセザンヌは無意識の内に多視点で描いたのかは分かりませんが、セザンヌの多視点での画面の歪みが今までの表現方法にない画期的な表現で、今までの概念に囚われず、絵画を開放したと言えます。
その後、多視点画法は、ピカソやブラックによってキュビズムとして発展します。

もう一点セザンヌの新しさはバルール(色価)のズレがあるのですが、これは次に考えたいと思います。