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ピエール・オーギュスト・ルノワール「髪かざり」1888年 81.4x57.3㎝ ポーラ美術館蔵
1841~1919


             ルノワールの変遷Ⅱ

前回のブログで国立新美術館で開催されている『ルノワール (伝統と革新)』展で展示されているルノワールの「団扇を持つ若い女」を取り上げましたが、前回の作品は若い頃の作品で、今回取り上げる「髪かざり」は中期の作品で、この絵が描かれた1888年からルノワールの作風が大きく変わります。 '


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上の作品2点は、「髪かざり」の部分と前回取り上げた「団扇を持つ若い女」の部分ですが、例えば二つの作品の頬の部分を見比べてもらえれば分かると思うのですが、下の「団扇を持つ若い女」の作品の境界線がぼやけて描かれていますが、上の「髪かざり」では境界線がはっきりと描かれています。

また色彩が下の絵では繊細に変化しているのに、上の絵では色彩の変化がはっきりして、
上の絵では生の白のように白色が強く、青色が下の絵では白色に隠れて微かに透けて見えつように絵がれていますが、上の絵では青色が上から描きたしたように描かれています。
そのせいで上の絵ではルノワールの特徴の透き通るような肌の美しさがありません。

この時期の絵はルノワールの柔らかな空間がなくなり固い空間になっています。


1888年頃にルノワールに何があったのでしょうか。

画集には『イタリア旅行でラファエルやポンペイの壁画を見たこと、チェンニーノ・チェンニーニの「絵画論」に触れたこと、さらにセザンヌの教訓などが、彼を構図や形態に向かわせる。』書いてありますが、私も最初はそうかなと思ったのですが、ルノワールの年表を見たらこの節は疑わしく思えてきました。

まずイタリア旅行での影響ですが、イタリア旅行は1881年に行っていますから、作品が変化した年、1888年よりも7年も前で、レスタックのセザンヌを訪問したのは1882年で6年も前です。
そんなに前のことで1888年に急に作品がこれ程スランプ(ルノワールはスランプを認めている)になるでしょうか。

ルノワールは1888年、関節炎とリュウマチに初めて発病します。

関節炎とリュウマチの苦痛は私には分かりませんが、晩年は筆を持つことが出来ず筆を手に括り付けてもらって描いたそうです。

ルノワールのこのスランプの始まりは、関節炎とリュウマチにより手が以前のように繊細に動かなくなりこの様な固い感じの作品になったのではないでしょうか。
上の二点の細部の繊細さを見比べると病気としか考えられません。