♪大人の「哀しみ」と「ゆらぎ」 | ◆VISTAの発見◆

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♪いつかはきっと セレンディピティ

台北に「小雪」という居酒屋があった。
日本人夫婦のまかなう飲食スナックで、裏通りにひっそり提灯を灯していた。

なんでも、事情があって横浜から、夫婦は移り住んだのだという。

夜更けに案内されて、すすめられるまま、連れの客はカラオケで盛り上がる。

夫婦を眺めていた私は、「じゃ、ヤシノミをうたいま~す」と思いつくままに選曲。

直立不動で、唱歌よろしく「椰子の実」を歌い始めたのです。

1 名も知らぬ遠き島より
  流れ寄る椰子の実一つ
  故郷(ふるさと)の岸を離れて
  汝(なれ)はそも波に幾月

2 旧(もと)の木は生(お)いや茂れる
  枝はなお影をやなせる
  われもまた渚を枕
  孤身(ひとりみ)の浮寝(うきね)の旅ぞ

3 実をとりて胸にあつれば
  新(あらた)なり流離の憂い
  海の日の沈むを見れば
  激(たぎ)り落つ異郷の涙

  思いやる八重の汐々(しおじお)
  いずれの日にか国に帰らん

と歌い終わってみれば、この夫婦、目をマッカにしているではありませんか。

自分たちの足跡が歌詞と重なって、こみ上げてくるものがあったのでしょう。

新たなり「流離の憂い」・・。

私も思わず目頭があつくなって・・。

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文学者の歌詞は深いものがあります。

島崎藤村の「椰子の実」、北原白秋「からたちの花」
石川啄木の「初恋」などどれも、聴くたびに胸の琴線にふれはしませんか?

詞に込められた大人の「哀しみ」と「ゆらぎ」が伝わってくるのです。