アーサーが勝利した、大きな戦いは完璧だった。
キャメロットでは平和がゆきわたった。
マーリンのキャンドルは、常にまばゆい光をともなって燃えていた。
新たな敵は全く現れなかった。
しかも、敵の中で最も手強いリアンス王はひそかに姿を消してしまった。
そのためアーサーは、君主としての義務に身をささげるだけでなく、王としての楽しみにも熱中した。
彼の好きな仕事は、狩りと、騎士にふさわしい騎馬槍試合だった。
すぐにアーサーの宮殿は、ブルターニュの四方からだけではなく、遠方の国からも名だたる騎士がやって来る馬上槍試合で有名になった。
ところがある日、いつもの大会の後で勝者と敗者が、闘技場での互いの健闘をたたえながら城で宴を開いている最中に、宴会場のとびらが突然開いた。
全ての参列者の驚きの視線の中、すらりとした背の高い若い女性が部屋の中ほどに入ってきた。
彼女はひだのある、大きな深紅のマントをはおっていた。
そのマントは彼女の足元まで届き、その上に輝く金髪が揺れていた。
新しい来訪者が話し始めると、招待客たちは息を止め、静寂が部屋を支配した。
「私はアヴァロンから参りました」
「我々はあなたに何をしてさしあげればよいのですか?お嬢さん」
沈黙を破ったのはアーサー王だった。
「あなた方はいとも簡単に私の願いを聞き入れてくださるでしょう」彼女は答えた。
「なぜなら、今日この宮殿に集まっている、王国の優れた騎士たちのうちの1人が、この剣を鞘(さや)から抜いて、私を助けてくださることは明らかです」
こう言いながら、彼女は肩からマントを滑り落とした。
するとみんなは、彼女の腰のところで、鍔(つば)に宝石がはめ込まれた剣がきらめくのが見えた。
柄頭(つかがしら)の擦り傷の具合から、その武器はかなり使い込まれたもののようだった。
騎士たちはみな、彼女を助けたいと願い、彼女に駆け寄った。
しかし、剣は鞘(さや)にとても深く打ち込まれていたため、誰1人として微動だにすることができなかった。
アーサーでさえ、動かすことができなかった。
つづく